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奄美の自然と文化をディープに感じる

国直集落まるごと体験

author: 中村 修(更新日:2016年03月10日)

東シナ海を一望できる宮古崎

東シナ海を一望できる宮古崎。リュウキュウチクが群生するダイナミックな眺めだ

シマの宝あふれる国直集落

私のシマ(奄美の方言で「故郷」の意)は、大和村の国直(くになお)集落。

幹線道路から眺めると、茂みに隠れて見過ごしてしまいそうな小さな集落だが、一歩足を踏み入れると美しい自然や伝統文化が満載で魅力あふれる集落だ。

集落民の一番の自慢は白い砂浜が美しい国直海岸だろう。海水浴やウミガメ観察、夕日のスポットとして一年を通じ多くの観光客が訪れる。特筆すべきは海岸が観光地でありながら、人々の暮らしと密接に関わっている点だろう。男たちは目の前の海に潜り、婦人たちも季節ごとに海藻や貝を採る。子どもたちだって中学生にもなれば漁の手伝いをする。なにより、夕暮れ時には集落民が集まってきて社交場のごとく賑わう。老若男女が一年を通じて関わりを持つ特別な場所だ。

フクギ並木

国直集落のシンボルともいえるフクギ並木

また、海岸の向こうに臨む国定公園宮古崎も人気の場所だ。ダイナミックな地形とリュウキュウチクの広がる草原は奄美十景の一つにも数えられる。近年はタイワンヤマツツジの復活に取り組む青年団によって「宮古崎つつじウォーク」開催され、多くの人が岬へ訪れるようになった。

集落の中に入ると濃緑の葉が印象的なフクギ並木が人々を迎え入れる。フクギは奄美各地で防風・防火林として利用されてきた島を代表する樹木。国直の人々は大切に保存し活用している。家々を取り囲むフクギ並木は奄美大島の原風景だろう。

自転車などのアクティビティ

ツアーには、自転車などのアクティビティも新たに登場

新たなツアーが続々

私は、そんな国直の魅力に魅せられ、それまでの仕事を辞めNPO法人・TAMASU(たます)を立ち上げた。「たます」とは奄美の方言で「共に守り分かち合う」の意。国直に残る自然や文化、人々の結びつきといった島の宝を守り伝え、集落民はもとより、全ての人々がその恩恵を受けることができる地域づくりを行うことが設立の目的だ。

活動の中心は、年中行事や伝統文化、地元の人材といった地域資源を活用した体験ツアー「国直集落まるごと体験」を開催すること。

2015年3月に「うわんふね(島の正月料理)づくりツアー」や「アオサ摘みツアー」、「タンカン狩りツアー」、「集落散策ツアー」と4種類のモニターツアーを開催し活動をスタートした。現在では「海辺で楽しむ」を初め「里山・集落・祭り・島料理・島人」などの6つのカテゴリーに40種類のツアーを開催している。

ツアーは集落散策やサイクリングなど年間を通じて体験可能なメニューから農業や漁業、豊年祭など期間限定のメニューなど種類は様々。また今シーズンは、SUP(スタンドアップパドルボード)やカヌー、自転車など乗り物系のアクティビティを新たに加え、観光客にも気軽に体験できる内容となっている。
(詳細はホームページ「国直集落まるごと体験」 https://www.amami.org/

アオサ摘み

磯の香りいっぱいのアオサ摘みを楽しむツアー参加者ら

集落民が「まるごと」講師に

これまでのツアーで最も印象深かったのは「アオサ摘みツアー」だ。

ツアーは、地元の中マサさん(76歳)と盛山サヨ子さん(76歳)の同窓生コンビが担当し、アオサ摘み~加工~調理と、一連の行程を案内した。

お二人はこれまで観光業に従事した経験はなく、ツアーの案内も当初は普段のアオサ摘みの延長であったに違いない。しかし、2回目の開催以降変化が現れた。ツアー開始1時間前から会場の清掃を行い、お客様を迎える準備を整えていた。ツアー中は参加者に目を配り、安全管理はもとより丁寧な指導を行うほか、会話を楽しむ余裕が生まれた。

住民とのおしゃべり

住民たちの手ほどきでアオサを洗う。住民とのおしゃべりも楽しみの一つだ

もっとも嬉しかったのは、アオサの洗浄作業中のおしゃべりだろう。島のオバたちは単純作業の際は手を休めないが同時に口も休めない。作業の間中しゃべり続け、「昔はああだった」「この食材はこうすると美味しい」などのたわいもない話や、時に出てくる笑い話など楽しい時間だった。何より彼女らの話す言葉こそ本物の暮らしであり、外から観賞するだけでは得ることのできない体験ツアーの醍醐味であったと思う。

マサおば、サヨ子おばを初め、地域には多くのスペシャリストがいる。農林水産業従事者、八月踊りの唄い手、工芸品の製作など様々な分野があり、タレントには事欠かない。

これからの目標は彼らに合わせたメニューを開発し参加してもらうこと。そして集落民が「まるごと」講師になってほしいと願う。

国直海岸の夕暮れ

国直海岸の夕暮れ。美しい海岸は住民たちの自慢であり、大事な社交の場でもある

「住み続けたい」「帰りたい」と思えるシマを

「国直集落まるごと体験」がスタートして1年が経過した。

これまで見過ごしていた島の宝を再発見し、新たな価値を見出すことがいくつもあった。そしてそれらの気づきは、観光者や外からの視点によるものだった。

島の暮らしを教えているつもりが教えられることの多い活動であったように思う。これからも地域住民と旅行者が刺激し合い、島の宝を見つけることができるツアーにしていきたい。

また、活動を続けるに当たり肝に銘じておきたいことがある。それは、私たちにとって観光は「手段」であって「目的」ではないということ。観光客が増加し、所得が向上したとしても、地域が疲弊し、住民同士のつながりが希薄になっては本末転倒だろう。

住民が地域に誇りを持ち、住民満足度が向上するよう活動していかねばならない。

マサおばやサヨおばがいつまでも国直に住み続けたいと願い、島を離れた若者たちがいつかは島に帰りたいと思うような集落でありたい。

魅力ある観光地づくりは魅力あるシマづくりであると信じよう。






中村 修(なかむら・おさむ)著者紹介

1968年大和村国直生まれ。役場職員を経てNPO法人・TAMASU代表。住民が住み続けたいと思う地域づくりに全力を注ぐ。

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奄美が大好き!なわたしが、旬の奄美をご紹介

あまみんちゅあまみんちゅ[no.46]
桑山 裕成さん(島魚 あま海)

奄美大島本島南端・瀬戸内町古仁屋の中心地にある「島魚 あま海」。地元で獲れた南国ならではのカラフルで新鮮な魚介類が並ぶ魚屋さんだが、その一角にはイートインスペースを設ける。「島内外の方に、島魚を食べてもらい美味しさを知ってもらいたい。島魚自体にもっと興味を持ってもらえれば」と意気込む。

古仁屋生まれ。高校まで地元で育ち、鹿児島市の専門学校へ。そこで調理を学び、ホテルでの修行を経て4年前、古里へ戻った。山と海に囲まれ自然豊かな古仁屋は、山の幸、海の幸に恵まれ、奄美ならではの食材がそろう。父親の一成さんが魚の仲買をしていたことから、ここで魚屋を営むのが昔からの夢だった。帰郷を機に店を構え、家族全員で切り盛りする。

古仁屋はもともと、漁師の街と思っていた。しかし島を十数年離れて戻ってみると、若者を中心に魚離れが急速に進んでいた。「目の前に海が広がり、このような恵まれた食材があるのに。もったいない」。料理修業は、売り手として魚を理解するという考えだったが、せっかくなら魚の美味しさ、そして店のPRにもなると思い食事の提供も始めた。

あまみんちゅサブメニューは現在、海鮮丼の一品のみ。600円と安価だが、魚屋としては手が抜けないと採算は度外視。「まずは奄美大島の島魚を味わってもらうためのお試し価格。PR代込みの値段です」と笑う。お祝い事など事前に予約すれば、島魚をふんだんに使ったお寿司や盛り皿、恵方巻きなども準備するようになった。

成田-奄美の格安航空が就航後、ネットの口コミなどで評判が広がり、海鮮丼目当ての観光客が多くなった。将来的には、定食なども提供したいと考えている。でも、まずは「島の若者にも食べてほしい」。今後も島内外から奄美の島魚をアピールしていく。

あまみんちゅメイン

DATA

海鮮丼

  • 魚汁も付いて600円。裕成さんらが当日水揚げされた地元の新鮮な魚介類の中から、赤身や白身、エビなど5~6種類を選んで、盛りつけるぜいたくな一品。特製のダシしょうゆも島魚の味を引き立てる。日替わりで、午前11時30分から提供。数量限定のため、売り切れ次第終了するが、予約分は準備する。店内で販売している魚を、その場で刺し身にして食べることもできる。
  • [住所]瀬戸内町古仁屋春日6-1
  • [営業時間]9時~19時(定休・日曜日)海鮮丼は、なくなり次第終了。予約があれば、対応可
  • [電話]0997-72-1280
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