「ヤクザ映画ではいまのところ一番よくできてるんじゃないかな」と最新作『アウトレイジ 最終章』について語った北野武監督 撮影/RYUGO SAITO (C)oricon ME inc.
「ヤクザ映画ではいまのところ一番よくできてるんじゃないかな」と最新作『アウトレイジ 最終章』について語った北野武監督 撮影/RYUGO SAITO (C)oricon ME inc.

北野武、世の男へメッセージ「人のせいにするな、“当たり前のこと”をやれ」

 コメディアン・ビートたけしであり、映画監督としても“世界のキタノ”として知られる北野武の最新作映画『アウトレイジ 最終章』が10月7日から公開中。『アウトレイジ』『アウトレイジ ビヨンド』に続くヒットシリーズの完結編である今作の制作秘話をはじめ、チャンスの掴み方や“楽しさ”、“努力”など北野節たっぷりに語ってくれた。

【画像】西田敏行・塩見三省ら強面俳優が集結

■いつかまた役者オールスターズでヤクザ映画をやりたい

 日本映画会を代表する豪華俳優陣が集結してきた『アウトレイジ』シリーズ。『最終章』での撮影現場の思い出は役者の底力を感じたことだという。

 「今回一番心配したのは、西田敏行さんと塩見三省さんの体の具合。衣裳合わせの時から心配してたんだよね。でも、役者はすごいね。撮影始まったらみんなビシっとなって、台詞も芝居も完璧。“舞台”に立つときには変なところは見せないんだから。西田さんなんかはいつも以上にアドリブが多くて、カットするのが大変だったんだよ(笑)」

 2010年に『アウトレイジ』が公開されてから、約7年で三部作品として完結を迎える。このシリーズは北野監督の中でどういう存在だったのだろうか。

 「バイオレンスやヤクザ映画はVシネ以外では扱わないような時代に、ちゃんとした役者で撮ればいいものができると考えて、あえて人気のないジャンルに挑戦した作品でね。俺がバイオレンスを好きだってものもあるし。その専門になって、深作監督の『仁義なき戦い』シリーズみたいにヒットを飛ばし続けていくのもいいと思うけど。ただ、これだけを続けるわけにもいかない。実は2本目の『アウトレイジ ビヨンド』の脚本を書いている時には3本目を想像して書いて、ほぼ出来上がっていた。とりあえず今のところは3本に収めたんだよね。何年か後にみんな生きてりゃ、また役者オールスターズで豪華なヤクザ映画をやりたいって気持ちもあるよ」


■北野武が考える、男の闘い

 「アウトレイジ」シリーズはこれまで“全員悪人”をうたってきたが、『最終章』のキャッチコピーは、“全員暴走”だ。

 「ヤクザの世界といっても、拳銃と暴力を除いてしまえば一般実社会の話になるんだよね。派閥や裏切りとか、いきなりとんでもない奴がコネでやってきたり、ちゃんとやってきた奴が理不尽に外されたり…。1本目は分かりやすいヤクザらしい話。2本目は人間関係。3本目は、完全に社会や組織のゆがんだ形の話になった。実際日本でもよくあることだよね。意識して作ったわけではないけど、そういうストーリーになった。しょせんヤクザも一般実社会と同じなんだってね」

 “男たちの闘い”を描いた「アウトレイジ」シリーズだが、北野監督自身が闘っているものは何か問いかけてみた。

 「闘うっていうか、ずっとイライラしているのは、何年もかけて作られた今の日本のシステムかな。いろいろ組織や団体があるけど、既得権益ばかり考えられてる。映画でもなんでも、独立プロなんかははじきとばされるようなシステムになってて、コネでできている部分もあるし、マヌケな奴らにヨイショしなきゃいけないこともある。そういうシステムが出来上がっちゃってて、新しく参入するには相当なパワーがいる社会になってるよね。『みなさんのために私はこういうカタチを壊してやります』っていう気はさらさらないけど、自分のために壊していきたいってことだよね。そういうのは自分で勝ち取るものだから。これからも映画の作り方が少しずつ変わっていって、いい映画界になることを期待してるよ」


■“当たり前のこと”をやっているだけ、それが創作活動につながっている

 テレビ出演、小説の執筆、映画監督など多彩なフィールドで活躍する北野監督。創作活動の時間はいつ捻出しているのだろうか。第一線で活躍し続ける男のエネルギーの源とは?

 「まぁ、泳いでいる魚を偉いねって褒める奴はいないよ。努力しているわけじゃないけど、ただ“サメみたいに泳ぐのをやめたら死ぬ”みたいなもんだ。でも無理して泳いでいるわけでもない。若い奴と話してるといつの間にかお笑いのネタの話になってるし、家に帰って映画の脚本書こうかなって思うとタイトルだけ書いて終わる日もある。王貞治さんも長嶋茂雄さんも夜中にバット振っていて、それがすごいって言われていたけど、本人は『バット振らなきゃ寝られねえんだよ』ってくらいのもんなんだよね。例えばさ、徹夜するくらい麻雀が好きな奴は“徹夜で麻雀やれるような仕事”を見つければいいんだよ」


■「いつでもくたばってやる」

 創作活動やアイデア出しは、意識してやっているわけではなく、日々当たり前のこととして捉えている。そのエネルギーの源はやはり、“楽しさ”だろうか。

 「まぁ、“楽しい”にもいろいろあるよ。サウナも入っている時は苦しいけど、出た時は涼しくて気持ちいい。重量挙げもマラソンも楽しいかって聞かれたら「苦しい」って答えるけど、後から考えたら楽しいなってこともある。“苦しい楽しさ”もあるんだよね。でも、楽しく生きるってのはどうも分かんねえ。一番楽しいのはきっと、くたばる時だと思ってるんだ。死ぬときが一番楽しい。この世に生まれて生きていることは、かなり苦痛だし、罰だと思ってる。“誰よりも楽しく生きてるように見える”なんて言われても、それはヤケクソだからさ。『いつでもくたばってやるぜ』って思っていからだろうね」


■世の男達へのメッセージ「人のせいにするな」

 北野武が30~40代の頃はどんな男だったのだろうか。世の働き盛りの男達への激励メッセージをくれた。

 「30代・40代の男ってのは、それこそ差がついてくる頃なのかな。勝ち負けが分かってくるような世代なんだろうな。その世代の男達へのメッセージは、”あらゆる責任は自分が負うもの”で、人のせいにしないってことだろうね。自分がツイてないと嘆くんじゃなくて、それは実力がないってことだよ。俺らは芸人だから『漫才してても売れないんです』『お前が下手だからだろ』、それで終わり。チャンスが無いとかいろいろ言う奴もいるんだけど、チャンスを掴むのだって実力だよ」

 「実力をつけるためには…努力しているって、自分で感じているうちはダメだと思うよ。人から“よく努力していますね”って言われても、俺は『馬鹿なこと言うなよ』って思っちゃうよね。自分では努力しているとはまったく思ってないんだから。後から考えりゃ、漫才のノートはいつも持ち歩いて何かあるとすぐ書き込んでたし、それを人が見りゃ努力に見えるかもしれない。でも、ごはん食べたり水飲むのと同じようにギャグを考えていただけだ。それを努力というのはおかしな話でね。今の若手はそれもせずに「どうして…」っていうから。言葉としては「努力しろよ」って言う場合もあるけど、それは努力じゃなくて“当たり前のこと”をやっていないだけなんだよね」
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