| お答えします |
川崎 雅生(かわさき・まさお)さん
トンボ鉛筆広報 |
−鉛筆の粉吸い付けて消す−
消しゴムの性質は1770年ごろ、イギリスの化学者、ジョセフ・プリーストリー氏が発見したといわれます。鉛筆(えんぴつ)の芯(しん)に使う黒鉛(こくえん)で紙に文字が書けることが発見されてから約200年後。日本にいつ、消しゴムが伝わったかは定(さだ)かではありませんが、明治政府(めいじせいふ)が「学習社会」をつくろうと、鉛筆や消しゴムを大量に輸入(ゆにゅう)したころだと推定(すいてい)されます。
最初の消しゴムは、その名の通り、樹液(じゅえき)から採(と)れる「ゴム」でできていました。しかし、生ゴムではなかなか上手に消せません。次第(しだい)に研究・開発が進み、1900年代中ごろに、プラスチックを使った消しゴムが開発されました。現在使われている消しゴムはほとんどがプラスチック製ですので、「消しゴム」という名はちょっとおかしいですね。正式には「字消し」と呼びます。
さて、消す仕組みを話しましょう。鉛筆で書いた字や絵を、ギューッと拡大して見てみます。私たちの目にはつながって見える線も、実は小さな点の集まりだということが分かりますね。野球場の芝生(しばふ)にボールを並べて文字を描くことを考えると分かりやすいですよ。このとき、芝生が紙で、ボールが鉛筆(黒鉛)の粉ということになります。
消しゴムで字を消すということは、芝の上のボールをほうきで集めるのと同じようなものです。「消しゴムで紙の表面を削りとっている」と思っている人もいるでしょうが、実は違うんですね。
では、どんな方法で「黒鉛のボール」を掃除(そうじ)するのでしょうか。家のじゅうたんにペットの毛がついたら、粘着テープに吸い付けて取りますよね。消しゴムの成分には、黒鉛の粉を吸い付ける性質があります。この性質を発見したのが、最初に紹介したプリーストリー氏なのです。
消しゴムに吸い付いた鉛筆の粉は、消しゴムの表面を黒くします。表面が黒い粉だらけになると、吸い付ける力が弱まって、紙の上をツルツル滑ってしまいます。そこで、適度な摩擦(まさつ)で消しゴムの表面が削れて、“消しカス”が出るように、柔らかくする工夫をしているんですよ。
ところで、美佳さんが疑問に思っているように、普通の消しゴムではボールペンの字を消すことはできません。
なぜ消せないのでしょう。先ほど、鉛筆の字は芝生にボールが乗っている状態−と説明しました。これがボールペンの場合は、芝生の上にベッタリと油が塗(ぬ)られている状態(油性ペン)、またはインクが芝に染みこんでいる状態(水性ペン)です。ですから、ボールペンの字を消すには芝生ごと刈り取らなければなりません。そこで、紙の表面を削って字を消す「砂消しゴム」が必要になります。
最後に…。みなさんは今、鉛筆や消しゴムを不自由なく使っているでしょう。でも、かつて日本が戦争をしていた時代には、それまで仲良くしていた外国と貿易もできなくなり、消しゴムや鉛筆の原料を輸入できずに困り果てたことがありました。世界各国がお互いの産物を交換し合える平和な社会を大切にしていきましょうね。
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