| お答えします |
池上 俊(いけがみ・たかし)さん
元加治木高校長 |
−分子の結び目間が動く−
ゴムを引っぱれば簡単に伸び、手を離せばすばやくもとにもどる。こんな当たり前のことが、本当はとても不思議なことなのです。瑠美ちゃんは、スーパーボールで遊んだり、ペットボトルと比べたりしてそのことに気づいたのだから、すごい!
「力が加わると形を変え、力が加わらなくなるともとの形にもどる」。これは弾性(だんせい)という性質です。この性質は、固体であればどんなものにもありますが、ゴムだけが異常に大きいのです。その秘密は、ゴムの組み立て=構造(こうぞう)=にあります。
私たちを取りまくすべての物は、それぞれの物のもとになる小さな粒(原子、分子)が集まってできています。この粒は、電子顕微鏡(けんびきょう)でも見ることができないほど小さいので、物を見たりさわったりしても、粒からできていることは分かりません。鉄くぎは鉄のもとになる粒=鉄原子(げんし)=が、氷ざとうは、さとうのもとになる粒(さとう分子)が集まってできています。
ところが、ゴムは大変な変わり者です。ゴムのもとになる小さな粒は、そのままでは集まりません。糸を通したビーズのように長いくさり=鎖状高分子(さじょうこうぶんし)=になって、このくさりがからみ合いながらぐじゃぐじゃと集まっています。ちょうど、たくさんの綿(わた)の繊維(せんい)が集まって綿になっているように。
それだけではありませんよ。それぞれのくさりには、橋をかけるようにくさり同士をつなぐ結び目=架橋点(かきょうてん)=がいくつもあって、まるで目の粗(あら)い網(あみ)みたいになっているのです。結び目の橋をかけているのはイオウです。この網の結び目と結び目の間はいつも動いていて、できるだけ縮んだ形(丸い形)になろうとしています。頭と尻を押さえられたミミズが、胴(どう)の部分をくねくね動かしているのとそっくりです。
このようなゴムを引っぱると、くさりはどうなるでしょう? それぞれのくさりの縮んだ部分が伸びます。手をゆるめたら? ただちに縮んでもとの形になります。ゴムが伸び縮みするカラクリは、くさりの結び目と結び目の間が、伸びたり縮んだりすることだったのですね。
さて、ではペットボトルはどうでしょう。実はペットボトルも、ゴムと同じようにくさりの集まり(鎖状高分子)でできているのです。でも、ペットボトルのくさりはゴムのくさりと違って結び目がなく、縮んだ部分もなく、じっと動きません。だから伸び縮みしないのです。
ペットボトルのくさりも温度が上がっていくとモソモソ動くようになります。それでだんだんやわらかくなり、引っ張ると伸びるようになります。でも、ゴムが伸びる仕組みとはまったく違います。くさり同士がズルズルとずれて伸びていき、ついには切れてしまうのです。だからもとの形に戻ることはありません。
このように、物の性質はすべて、それぞれの物のもとである粒の動き方できまるのですよ。すごいでしょう。
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