| お答えします |
面高 俊宏(おもだか・としひろ)さん
鹿児島大学理学部物理科学科宇宙情報講座教授 |
−イギリスの牧師が想像−
夏紀ちゃん、こんにちは。ブラックホールは大食漢(たいしょっかん)。好き嫌いなく、何でも食べますし、食べれば食べるほどおなかがすく怪物(かいぶつ)です。光でも地球のような惑星(わくせい)でも、ペロッと食べてしまいます。
ブラックホールは光も飲み込んでしまうので真っ暗で見えません。ですからブラックホールはまず想像の世界で発見されました。最初に考えだした人はイギリス人の牧師、ミッチェルです。1783年に考えを発表しました。
夏紀ちゃんはボール投げをしたことがありますね。ボールを真上に思い切り投げると高く上がり、そのうちまた落ちてきます。ボールはなぜ落ちてくるのでしょうか。それは地球の重力(じゅうりょく)のせいです。
じゃあどんな速さになったらボールは上がりっぱなしで落ちてこないのか、ミッチェルは計算しました。秒速(びょうそく)11キロメートルというものすごい速さでボールを真上に投げ上げたら、2度とボールは地球に帰ってきません。宇宙で一番早く走れるのは光です。光のスピードは秒速30万キロメートル。ミッチェルは、すごく重力の強い星があったら、星から出た光でさえも重力でひき戻され、光が星から出られないような真っ暗な星があるのではと考えたのです。これがブラックホールの登場(とうじょう)でした。
このミッチェルの説は簡単でわかりやすいですが、残念ながら正しくはありません。正しい説を立てたのは、ドイツのカール・シュワルツシルドです。1915年、ドイツの天才アインシュタインは、広大な全宇宙を支配する方程式(ほうていしき)を発表します(一般(いっぱん)相対性(そうたいせい)理論(りろん))。私たちの周りの空間や時間が重力によってゆがめられるというのです。空間がゆがんでいれば光もまっすぐに走れません。
この難しい方程式にシュワルツシルドは挑戦(ちょうせん)しました。彼は第1次世界大戦でドイツ軍人として戦っていましたが戦場(せんじょう)でアインシュタインの論文を読み、星の強い重力のもとで、空間や時間がどんな風にゆがむかを考え、方程式の答えを見つけました。それが光さえも飲み込むブラックホールだったのです。シュワルツシルドはこれを戦場からアインシュタインに送り、アインシュタインがかわりに学会で発表しました。しかし、その数カ月後、シュワルツシルドは40歳の若さで死にます。戦争は多くの有能な人の命を奪います。生きていればもっと活躍したはずです。
ブラックホールという名前を付けたのは、アメリカの有名な物理学者(ぶつりがくしゃ)ホイラーです。1969年のことです。ではブラックホールはどこにあるのでしょう。夏の星座、白鳥座の背中には有名なブラックホール白鳥座X−1がいます。このブラックホールは青白い大きな星を食べている最中でした。太陽のような星を100万個から10億個も食べた巨大ブラックホールも銀河(ぎんが)の中心に見つかっています。
ブラックホールは鹿児島とも縁が深いです。1979年に内之浦町から打ち上げられた人工衛星(えいせい)「はくちょう」は多くのブラックホールを観測しました。入来町のベラ望遠鏡(ぼうえんきょう)でも、巨大ブラックホールから高速で飛び出す電波(でんぱ)、ジェットを観測しています。
こんなにブラックホールは空にいっぱいです。外に出て夜空を眺めてください。ブラックホールも夏紀ちゃんに手を振っていることでしょう。
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