| お答えします |
山田 守彦(やまだ・もりひこ)さん
いおワールドかごしま水族館展示課展示第1係 |
−ヨウジ2種のどちらか−
タツノオトシゴの仲間は水族館でも飼育されており、かわいい姿の人気者。岩に尾を引っかけている様子を見ることができます。タツノオトシゴは格好が龍(たつ)に似ていることから、「龍の落とし子」と名付けられました。英語では「seahorses(シーホース)」、つまり海の馬と呼ばれています。たしかに頭の形は馬にも似ていますね。
では、愛梨さんがもらった生き物は、何という名前なのでしょう。結論(けつろん)からいうと、特定するのは難しいのですが、トゲヨウジかスミツキヨウジという、タツノオトシゴの親せきと思われます。
タツノオトシゴの仲間は日本では10種類ほど確認されています。分類学(ぶんるいがく)上では、ヨウジウオ科に属しています。ヨウジウオ科は尾びれのあるなしなどで、さらにヨウジウオ亜科とタツノオトシゴ亜科に分かれています。皆さんがタツノオトシゴと聞いてイメージするのはタツノオトシゴ亜科のいくつかの種で、ヨウジウオ亜科の種類は棒状(ぼうじょう)の体で尾びれがあります。
愛梨さんのものは尾びれがないので、みなさんがイメージするタツノオトシゴとはやや体形が異なるものの、タツノオトシゴ亜科の種になります。頭部の形や、口の長さなどからトゲヨウジかスミツキヨウジと考えられます。2つはとても近い種類なので、残念ながら愛梨さんの標本(ひょうほん)からだけでは判別が難しいです。
鹿児島の海の浅場でよく見られるのはトゲヨウジで最大約30センチ。スミツキヨウジは50センチにも成長します。愛梨さんのものは30センチ近くあるので、トゲヨウジなら最大級ということになりますね。
「タツノオトシゴは魚なの?」と、水族館のお客さまによく聞かれるのですが、変わった形はしているもののれっきとした魚です。生態は分かっていないことが多いのですが、ふだんは船をとめているロープや海草などに寄り添って泳いでいたり、尾の先端(せんたん)を巻きつけてつかまっています。ダイビングの最中に見かけることもあるんですよ。
体は体輪(たいりん)というものに覆(おお)われており、ごつごつした印象を受けます。体色は保護色(ほごしょく)といって周囲に合わせて変えることができ、藻場(もば)にいれば緑色だったり、岩場にすんでいれば黒色だったりします。
口は小さく、ストローのような筒状(つつじょう)で、海中を泳いでいる動物プランクトンを吸い込んで食べています。
また、タツノオトシゴの仲間の多くは、オスは育児嚢(いくじのう)というカンガルーと似た袋を持っていて、メスが育児嚢の中に産卵し、赤ちゃんが生まれてくるまでオスが面倒(めんどう)をみるという習性があります。でも、トゲヨウジやスミツキヨウジには袋がなく、直接オスのおなかにメスが卵を産み付けて、ふ化するまで育てます。
タツノオトシゴの仲間は、数年前に体長1センチくらいの新種が見つかったほどで、世界にはまだまだ発見されていない種類がいると考えられます。海の中を眺めていると、新種を見つける機会にめぐりあうかもしれませんね。
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