| お答えします |
川崎 安亮(かわさき・やすあき)さん
鹿児島大学農学部獣医学科准教授 |
−口や舌のやけど防ぐ−
猫(ねこ)だけでなく、人間以外(にんげんいがい)の動物(どうぶつ)は熱(あつ)いものは食(た)べません。犬(いぬ)と猫で牛乳(ぎゅうにゅう)を使って簡単(かんたん)な実験(じっけん)をしてみました(牛乳でおなかをくだしてしまうことがあるので、注意〔ちゅうい〕が必要〔ひつよう〕です)。
猫は湯気(ゆげ)が立(た)つ50度(ど)でもなめようとしましたが、なめる前(まえ)にやめました。猫の体温(たいおん)に近い38度ならなめたものの、横(よこ)においた冷(つめ)たい牛乳のほうが好(す)きでした。犬も同(おな)じで、温(あたた)かい牛乳よりも冷たいほうが好きでした。また、熱くてもなめようとしたのは最初(さいしょ)だけで、熱いことがわかると近(ちか)づかなくなりました。このように、犬も猫も「猫舌(ねこじた)」で熱いものは嫌(きら)いです。料理(りょうり)をしない動物が「猫舌」なのは当(あ)たり前(まえ)かもしれませんが、ほかに理由(りゆう)はないのでしょうか?
「猫舌」も実(じつ)は動物の役(やく)に立っています。餌(えさ)を食べる大事(だいじ)な口(くち)や舌をやけどから守(まも)れるからです。熱いお湯(ゆ)に指(ゆび)をつけると、熱さよりも痛(いた)みを感(かん)じ、つけっぱなしにすると、やけどしてしまいます。動物が熱いものに口や舌をつけてやけどしたら、餌を食べられなくなって、死(し)んでしまうでしょう。
「猫舌」の人の原因(げんいん)は、まだよくわかっていないようです。しかし、猫の鼻(はな)の皮膚(ひふ)は冷たさよりも温かさに敏感(びんかん)(人間は冷たさに敏感)であることはわかっています。口や舌を餌につける前に熱さを敏感な鼻の皮膚で知ることは、やけどを防(ふせ)ぐために役立ちます。しかし、温かいほうが良(よ)い場合(ばあい)もあります。例(たと)えば、病気(びょうき)などで食欲(しょくよく)がなくなった猫には、冷蔵庫(れいぞうこ)から出(だ)した餌を少(すこ)しだけ温めてやると、食欲がでてくることがあります。
また、「猫舌」の人と熱いのが平気な人(さしずめ「人舌」でしょうか?)がいるように、人と暮(く)らす生活(せいかつ)が長(なが)くて温かいものを食べる機会が多くなると、「猫舌」から「人舌」になる猫もいるようです。「猫舌」という言葉は、猫が好きで、猫をよく見(み)ていた人が思(おも)いついた言葉(ことば)なのかもしれません。 |