天文館からバスに乗って約15分で行ける永吉。刑務所跡地に鹿児島アリーナができたのと区画整理で、町の様子がずいぶん変わったと聞いたけれど、以前はどうだったのだろう。今は新しい家が多い町を散策してきた。
まず、やってきたのは「永吉団地入口」バス停のそばにある
「ギャラリー茶房きはら」
。入ってみると、しっとり落ち着いた雰囲気のティールームに服飾品や陶器などの作品が置かれている。「作者の温もりを感じてほしい」とオーナーの木原妃侶子さん。私がときめいたのは、ガラスのアンティークアクセサリー「トンボ玉」のコレクションだ。トンボ玉は、なんと紀元前にヨーロッパで作られ、東南アジアやアフリカとの貿易に使われていたという。色が鮮やかで、丁寧に書かれた幾何学模様は現代的。古さを全く感じさせない。数千年の歴史を超えて、確かに作った人の温もりが感じられた。
茶房の方では、おにぎりランチ(850円)が先月から始まったと聞いて早速注文した。葉ランの上にあつあつのおにぎり2つ。それにおみそ汁、ちょっと甘味のある出し巻き卵、浅漬け、コーヒー。シンプルだけど、おにぎりのランチってなんだか新鮮。
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永吉の昔の様子を聞こうと
「永吉米穀店」
を訪ねてみた。ニコニコしながら出てきたのは、50年以上永吉に住んでいるというご主人の松尾健二さん。懐かしそうに昔の様子を振り返った。
30年ほど前までは、刑務所と大学のほか、住宅は少なく、田畑が広がっていたそうだ。「稲刈り後の田んぼで、野球をしたもんです」。甲突川に沿った道は「はぜの木馬場」と呼ばれ、ハゼの並木が続いていたという。今、甲突川沿いを歩いて来たけど、その名残はなかったなぁ。
昭和63年に始まった区画整理は、町の景観を大きく変えた。今は、整備された通りに近代的な家やマンションが立ち並び、街路樹が整然と植えられている。「道は広くきれいになったけど、土地が狭くなって出ていく人も多くて…なじみの顔が少なくなったねぇ」と話す松尾さんは、ちょっぴり寂しそうな顔になった。
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鹿児島アリーナで大相撲があった時、お相撲さんたちが入りに来たという
「永吉温泉」
にやって来た。取組が終わった後、土を落としに来ていたんだとか…。番台に座っていた2代目の和田見京子さんにそのときの話を聞いた。「その日は夕方まで貸し切りにして、女湯に横綱と大関、あとのお相撲さんたちは男湯に入りました。横綱のお世話をすべて付き人がしているのを見て、伝統の世界って厳しいなぁって感じました」。貴乃花や曙も来ていたそうだ。
和田見さんはお嫁に来て20年。ずっと番台に座っている。お客さんの多くは長年ここに来ることを日課にしているお年寄り。永吉は一人暮らしのお年寄りが多く、来ない日は心配になるという。番台から気さくに話す和田見さんを見ていたら、お年寄りたちは、温泉もだけど、おしゃべりを楽しみに来ているのかも、と思った。
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鹿児島アリーナの横を歩いていて、かわいいパン屋さん
「ウィンベル六本木」
を見つけた。パンにはヨワイ。昼食は済ませたんだけど、つい引き寄せられる。入って感動したのはその種類の多さ! どれにしようと迷っているうちに、次々と焼きたてのパンが運ばれてくる。店主の六本木文夫さんによると、パンの種類は100以上。店内で食べることもできるというので、ちょっといただいた。クルミパン、マフィン…どれもおいしくて、もっと試してみたくなる。こんなパン屋さんが近所にあったらいいなぁ。
朝6時から夜9時まで営業。朝早いのは分かるけど、夜9時まで店を開けているのはどうして?「昔は最終バスが9時くらいに着いていたので、勤め帰りの人が翌朝のパンを買えるように開けていたんですよ」。一人暮らしの身としては、ますます近くにあってほしいと感じる。朝も晩もパンになってしまうことを覚悟して…。
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ウィンベル六本木の店員さんが「安くておいしいテイクアウト専門のおすし屋さんがありますよ」と教えてくれた。ちょっと引き返すけど、行ってみよう。
「いらっしゃい!」威勢よく出てきたのは、
「魚や寿司」
の社長・和田見省三さんだった。魚屋さんが、どうしてすし屋やさんを?「すしを食べに行くと、どこも値段が高いでしょう。魚屋の自分なら新鮮でいいネタのすしを安くで作れると思ってね」…なるほど。すしダネはその日の朝捕れたものを使い、握ってからなるべく時間を置かずに出しているという。
お土産に上にぎり(800円)と、自分用に太巻き(800円)を買った。にぎりはすしダネがツヤツヤしていて新鮮さが大好評。アナゴ、卵、アサリなど7種類の具が入る太巻きも、ボリュームいっぱいで大満足した。(ぽ)
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イラスト 国生 敬
kokusho@ruby.ocn.ne.jp
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