かれこれ三十数年前のことである。二十歳のときカメラを買った。正しく言えば父親を騙して手に入れた訳で、四畳半のアパートの部屋代が五、六千円のころ、交換レンズ込みで十五万円ぐらいした様に記憶している。
騙し文句は「大学の授業で使うから」の一言だった。確かに実習で使いはしたが、他の安いカメラでもいいはずで、何もブロニカである必要はなかった。じゃ何故このカメラなの?と問われると、スネカジリのドラ息子を持った親こそ迷惑な話ではあるが、ただ唯欲しかったんですね。シガレットケースやオイルライター、女性用のコンパクトを製造する会社を経営していた、吉野善三郎というカメラマニアの情熱から誕生した、美しさと独自の機能を兼ね備えた世界一のカメラという理由からでしょうか。
カメラのレンズを通して記録した青春の日々は、今はもう返っては来ないのだけれど、S2の存在感が今も色あせないのと同じに、僕の心の中に輝いているのだ。
ちなみにゼンザブロニカのネーミングは、善三郎+ブローニー+カメラから作られたといわれ、一九五九年に初代D型、六一年にS型、六五年にS2型と発展。特にS2型は改良されながら長期間製造され、フォーカルプレーン式ブロニカの代表的モデルとされている。
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