上京して、どうしても慣れなかったのが醤油(しょうゆ)と味噌(みそ)の味だ。お刺身にしても、お味噌汁にしても、慣れ親しんだ味じゃない。コクがあって甘い、あの味。東京の醤油は、私にはかなりしょっぱくて、申し訳ないがおいしいと思えなかった。
故郷を思い出したとき、なぜか母の煮物が食べたくなった。うまみが深く、煮汁はさらっと透明。いろんなお店で煮物をいただいたけれど、「やっぱりあの味に勝るものはない」とつくづく感じた。
家庭料理の味は醤油と味噌で決まるという。結婚し、料理をするようになってから、私も母と同じ枕崎市のマルソエ醤油(薄口)で煮物をつくっている。毎日の味噌汁もマルソエ味噌で。種子島育ちの親方も、東京育ちの子どもたちも「おいしい」と食べてくれる。わが子にとっては、この味が「家庭の味」として記憶に残っていくんだなぁと思う。母の味にはまだまだ届かないけれど…。
ただ刺身醤油は子どもたちには甘すぎるらしい。が、やはり私には子どものころから食卓にあった味。親方がお土産に買ってきてくれるお寿司をこれで食べるとき、おいしさで心が満たされるとともに、故郷への懐かしさを感じている。
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