幼い日の思い出‥。
母の実家があった鹿児島市山
田町の県道沿いに、れんげ草の
花が一面に広がっているのをみて、
思わず車を止めた。
そこは懐かしい故郷―。れん
げ草の花の絨毯の上に寝転んで
みたり、摘んできた花の中に潜り、
かくれんぼをしたり、首飾りを
作って遊んだり‥。 そうして
はしゃいでいると、祖母がとろけ
るようなホクホクのあくまきを
糸で切り分け、黒砂糖ときな粉
をつけて食べさせてくれたのを
思い出していた。
美しいべっこう色のあくまきは、
一晩灰汁に浸したもち米を孟
宗竹の皮で包み、その汁で四時
間ほど煮込んで作る鹿児島な
らではのもち。五月の節句に欠
かせないものとして、子どもの成
長を願い伝えられてきた。
故郷を離れ、私が東京に住ん
でいる時も、母からの送り物には、
ダンボールいっぱいの食料に、必ず
あくまきが入っていた。娘の健康
を願う母の思いに、痛く心を打
たれたものだ。
祖母から母、母から私へ、それ
ぞれの思いが込められたあくま
き。このほろ苦く甘い「薩摩のお
ふくろの味」を、今度は私が伝
えていく時がきたんだなと思う。
これまでの感謝と、みんなの幸せ
を願って。
●撮影協力 かからん団子本舗 敏太郎
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