父は多趣味で、またとても器
用な人でした。自分が三味線に
凝っていたころは立派なケースを
作り、ついには三味線そのものま
で作ってしまいました。
私が琵琶を習い始めたころ、
父は早速得意の骨とう屋巡り
をして、琵琶を幾つか買ってくれ
ました。その後、琵琶を持ち運
ぶ時の袋と駒カバーを手作りし
てくれたのです。袋の内側には
琵琶が傷つかないよう柔らかい
布を使い、駒カバーもなかなか手
が込んでいます。
当時中学生だった私が父にきちんと感謝の気持ちを表現し
たのかどうか、あまり記憶に残っ
ていません。けれども父が亡く
なった今、琵琶奏者として生き
ている自分にとってこの二つは宝
物であり、お守りのような気さ
えしているのです。
もったいなくて普段はなかな
か使えませんが、特別な会の日
やいろいろと不安な海外公演の
時などを選んで大切に使ってい
ます。父は学者でしたが、私は
音楽に、兄は美術の道に進みま
した。そんな子供たちのことを、
時には心配げに、また時にはど
こか得意げに見守ってくれてい
ました。この貴重な手作りの品
を見ると、そんな父の姿を懐か
しく思い出すのです。
●撮影協力 NPOさつま
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