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思い出の逸品 フォークギター
荒木 秀樹さん(あらき ひでき)さん

陶芸家
プロフィル
陶芸家。日本大学芸術学部で彫刻を学び、同大学研
究科を経て帰郷。陶芸家の父・荒木幹ニ氏に師事し、
作陶を始める。2001年、家業の薩摩焼きの伝統
窯・荒木陶窯を継ぐ。日本伝統工芸展など入賞多数。
日本工芸会所属。鹿児島県陶業協同組合事務局長。
フォークギター
photo by SunSeeker
 大学進学のため、東京に着い て最初に買ったのは、フォークギ ターだった。高校時代、父のお弟 子さんにクラシックギターをもら ったが、ずっとフォークギターが欲 しいと思っていた。たしか池袋の 楽器店で3万円だったと思う。 入学祝いをはたいて、買い求めた のをおぼえている。
 当時は家賃12500円、ト イレ共同の安アパート暮らし。私 の生まれ育った美山の山奥とは 違って、大声で弾き語る事など ゆるされない。大学で彫刻を学 んでいた私は、夜9時ごろまで彫刻をやり、そのあと地下にあ るひとけのないアトリエ工房で一 人酒を呑みながら「松山千春」 「河島英五」「柳ジョージ」などの 曲を大声で歌った。古き良き時 代だったのだろう。守衛さんも 顔なじみで「あんまり遅くなる んじゃないぞ」と一言で黙認して くれていた。
 彫刻・バイト・酒・恋。大都会 東京で何かわけの分からない物 とがむしゃらに戦っていたあの頃。 寂しい時、くやしい時、つらい時、 いつもギターをかき鳴らしていた。
 あれから 27 年、家庭を持ち子 供も生まれた。当時は恥ずかし くてお蔵入りにしていたのだが、 19 歳の時に自分で作詞作曲し た曲をふと歌ってみると、一生懸 命な十代の私に出会ったようで 照れくさい。彫刻から陶芸へ、自 分の歩いてきた道は間違っては いなかったか。そして、今でもあの フォークギターは私のそばにある。
                            ●撮影協力 鹿児島ギタースクール
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