ビ
ー
ル
に
は
三
つ
の
貌
が
あ
る
。一
日の疲れを一気に発散させる喉
への刺激、酸味・甘味・苦味をバ
ランスよく含んだ美味、そして
銘酊をいざない古い脳を蘇らせ
る酒精。これを私は勝手に「ビ
ールの三位一体」と名づけている。
しかし、である。わが国のビー
ルはほとんど第一の貌だけで終
わってしまっている。「とりあえ
ずビール」のような間つなぎ、暑
気払いの冷たいだけの存在にお
としめられているのではないか。
その証拠に酒店のショーケースや
居酒屋のメニューをのぞくといい。ラベルだけ違った似たような味の
ピルスナー系ビールばかりが、さ
さいな味の違いを競い合っている
としか、私には思えない。
それに比してベルギービールの
豊穣さはどうだろう。よくもま
あ麦芽とホップと酵母だけでこ
れほどの芳醇さ、濃厚さをと驚
愕させ、一〇%を超えるアルコー
ル度数のものも多く確実に陶酔
へ導いてくれる。
中でも、このデュベルの最大の
特徴はクリスタルのように微細
にきらめき、生クリームのように
しっかりとした泡にある。泡を
味わい、泡に酔う。ちなみにデュ
ベルとはフラマン語で「悪魔」の意
味である。
●撮影協力 デュエンデ
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