幼いころ風邪をひくと、普段
は食べられないものが枕元にお
かれた。傘型のチョコレートだっ
たり、口に入れるとほろっと崩れ
るようなクッキーだったり、はし
りの果物だったり。
少し離れた街に買いに行くの
は父だった。時折、果物屋でマス
クメロンを買ってくることもあっ
た。めったに口にする事のない高
級品で、なり口には銀紙がまいて
あった。
メロンには忘れられない思い
出がある。
私は22歳で結婚し、24歳で
最初の出産を迎えた。夕方から陣痛が始まり10分おきになった
とき、父の運転で母と共に病院
に向かった。初産なので時間がか
かると言われ、父は帰宅し、母
も夜中一旦帰った。その後経過
が早く、あっという間の出産だっ
た。
連絡を受けて病室に来た母は、
一つのタッパーを取り出した。中
にはうす緑色のメロンがふぞろい
だが、一口大に切って入れてあった。
母が帰宅したとき、父はどこ
からかメロンを買ってきていて、い
つもは立たない台所でメロンの皮
をむき一口大に切っていたのだと
いう。
出産直後の娘の疲れを慮って
か、父は「これをしのぶに食べさ
せろ」といって母に渡し、自分は
面会に来なかった。
陣痛の緊張を乗り越え出産
の安堵の中、口にしたメロンの味
はいまでもはっきり覚えている。
●撮影協力 ONLY ONE東郡元店
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