大学受験に軒並み失敗した私は、失意のまま唯一合格した
短大の栄養学専攻へ入学した。
料理には全く興味がなく、みそ
汁の作り方もしらなかった。
そんな中、最初の調理実習は
クレープだった。小麦粉と砂糖に
塩を加え、卵・牛乳を混ぜる。
30分以上ねかして、フライパンで焼
いていく。同級生がいとも簡単
に焼いていくのを尻目に、私のフ
ライパンの生地は、広げようと思
えば一方にかたより、さらに穴
まで開いて、ひっくり返す事もで
きず、団子のように丸まっている。
「やっぱり私には向いていないん
だ…」と思い、ふいに涙が出そう
になった。そんなとき背後に気
配を感じて振り返ると、H先生
が立っていた。先生は「最初から
上手くはいかないわよ」と言って
油を引きなおし、おたまで生地
をひとすくいし、さーっとフライ
パンに流した。魔法のように広が
る生地をひっくり返し、パタンパ
タンと四つ折りにしていく様子
を今でも鮮明に覚えている。
20年以上たち、今は若いお母
さんに離乳食や幼児食を伝え
る立場となった。あの後1週間
以上、家で何枚も何枚も焼き続
けたクレープはいつしか定番のお
菓子になった。
●撮影協力 マルグリット
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