18歳の春。浪人生活が始まった。
姉が自転車を買ってくれた。予備校の入学
祝いというわけだ。しかも、当時まだ珍しかった
マウンテンバイク。世をはばかる身分の浪人生
が、そんなかっこいいものに乗っていいのか。少し
面映ゆいながらも、予備校への自転車通学が始
まった。
甲突川沿いの小道を走る。車座になって盛り
上がる花見客を横目に。あるいは、ベンチで語
りあうカップルを横目に。それでも、マウンテンバ
イクの乗り心地は最高だ。風が気持ちいい。地
味な浪人生活も、通学時間だけは気分が軽く
なった。ひとつ漕ぐたびに、未来が少しずつ近づ
いてくるような気がした。
18歳の春。その思い出は地味だが、僕に活力
を与えてくれる。
あれから十数年。僕は地味に、小さな店を
経営している。僕を待っていた未来、それは自
転車操業の日々だった。漕ぎ続ける人生だ。
撮影協力/サイクルショップ茶輪子
[プロフィル]
1971年、鹿児島市生まれ。法政大学法学部卒業。学生時代から、東京・神楽坂のジャズバー・コー
ナーポケットに通い、やがて店員として働くようになる。2001年に帰鹿。天文館でジャズバー・コーナーポケット
を開店。
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