2022年度
南日本文学賞は郷土の文芸振興を目的に1973年創設。
鹿児島県在住または出身者などの小説・評論、詩の中から最も優秀な作品に贈られます。
選考委員
選考委員の3氏が候補作の中から受賞作を決めます
青来 有一 (せいらい・ゆういち)
1958年長崎市生まれ。95年に小説家デビュー後、2001年「聖水」で芥川賞、07年「爆心」で谷崎潤一郎賞など受賞。元長崎原爆資料館長。長崎大学核兵器廃絶研究センター客員教授。近著に「フェイクコメディ」(電子版のみ)、「小指が燃える」。南日本新聞「日曜随想 朝の文箱」を22年4月から執筆。長崎市在住。
町田 康 (まちだ・こう)
1962年大阪府生まれ。97年に「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞、野間文芸新人賞、2000年「きれぎれ」で芥川賞、02年「権現の踊り子」で川端康成文学賞、05年「告白」で谷崎潤一郎賞など。詩人でもあり、01年に「土間の四十八滝」で萩原朔太郎賞を受賞。パンクバンド「汝、我が民に非ズ」のボーカルとしても活動する。静岡県在住。
三角 みづ紀 (みすみ・みづき)
1981年鹿児島市生まれ。東京造形大学在学中に現代詩手帖賞、2005年第1詩集「オウバアキル」で中原中也賞、06年刊「カナシヤル」で南日本文学賞と歴程新鋭賞。14年「隣人のいない部屋」で萩原朔太郎賞を史上最年少で受賞。朗読や作詞など多彩な表現に取り組み、16年4月から「南日詩壇」選者も務める。北海道在住。
関連記事

南日本文学賞、小説は馬場さん(宮崎市)、詩は栫さん(東京都) 両部門とも20代は初めて

(2023-03-05)
詩部門の受賞者、栫伸太郎さん
詩部門の受賞者、栫伸太郎さん
小説・文芸部門の受賞者、馬場広大さん
小説・文芸部門の受賞者、馬場広大さん
新選考委員の青来有一さん(左から2人目)が加わり、作品に対する評価や指摘が交わされた公開選考会=鹿児島市のみなみホール
新選考委員の青来有一さん(左から2人目)が加わり、作品に対する評価や指摘が交わされた公開選考会=鹿児島市のみなみホール
 2022年度南日本文学賞(南日本新聞社主催)の選考会が4日、鹿児島市の南日本新聞会館みなみホールであり、小説・文芸評論部門は宮崎市の会社員、馬場広大(こうだい)さん(29)=西之表市出身=の小説「ながらめ」、詩部門は東京都渋谷区の大学生、栫伸太郎さん(21)=鹿児島市出身=の「雨雨」(15編)に決まった。

 公募制が始まった1998年度以降、20代が両部門そろって受賞するのは初めて。今回、新たに作家の青来(せいらい)有一氏が選考委員に加わり、作家の町田康氏、詩人の三角みづ紀氏(鹿児島市出身)とともに作品を審査した。文学ファン約80人が見守る中、小説55編と評論2編、詩20編の計77編から絞られた小説3編、詩3編について、3氏が部門ごとに1編ずつ批評。作品の主題設定や表現技法などを掘り下げ、文学論を展開した。

 馬場さんの小説は、種子島で暮らす青年がシングルマザーの女性に恋心を抱く中、人との対話が苦手な自身と向き合う物語。「何げない日常から話を立ち上げる技巧がある。方言の使い方も効果的」「小さな地域をこまやかに描いている」と、3委員が一致して推した。

 栫さんの詩は「文字列の工夫に視覚的効果がある」「凝視する私と外界の景色が反響し合う」「頭で考えているより肉体で書かれた実感がある」と評価された。

 受賞した2人は共に会場で選考を見守った。馬場さんは「8度目の挑戦でやっとたどり着けた。情熱を持って書き続けたい」。昨年度も最終候補だった栫さんは「委員の声をじかに聴けて良かった。詩作の核になるものを見つけられた思いでうれしい」と語った。

 贈賞式は3月下旬、鹿児島市の同会館である。
主催 南日本新聞社