奄美の自然と島唄 世界に 「ライブで皆と気持ちを共有できる日が待ち遠しい」

唄者 里アンナ
(2020/05/14 04:30)
 「今まで当たり前のようにファンや多くの人と直接会い、歌ってきたことは、本当に人間らしい素晴らしいことだったと気付かされた。ライブやコンサートで皆と気持ちを共有できる日が待ち遠しい」

 新型コロナウイルスの影響で国内外の公演はほぼ中止となり、今は一人、奄美の海や森に向き合い歌い続ける。幼い頃から親しんできた島唄は奄美の自然と同様、歌詞やメロディーが自分自身に溶け込んでいると感じるほど身近な存在だ。

 「唄に集中すると無の境地に至る。その瞬間、感じるものがある」。フェイスブックの通信アプリ「メッセンジャー」を通して行ったインタビューの端々で島唄への内に秘めた熱い思いを語った。

 奄美市笠利出身。3歳の時から祖父から島唄を教わった。唄を意識したのは15歳のとき。甲状腺の病気を患い手術を受け「もう声が出なくなるかもしれない。歌い続けたい」と強く思った。闘病を終え18歳で上京。島唄だけにこだわらずポップス歌手を目指し2005年に「恋し恋しや」でメジャーデビューを果たした。

 曲を発表する中で、「島唄特有の節回しを入れてほしい」とプロデューサーから要望された。「節回しをポップソングで使うのは不自然。原点の島唄を中心に活動しよう」。そう決意した。弾き語りを習得するため、30歳を目前に三線の練習を開始。その成果が15年のアルバム「紡唄」で、自ら演奏し奄美の島唄だけを収録した。

 11年、ミュージカル・新演出版「レ・ミゼラブル」のオーディションに応募。7カ月に及ぶ審査を受け、主人公に影響を与えるファンテーヌ役を射止めた。13年に上演。帝国劇場を中心に全国で上演された。

 NHK大河ドラマ「西郷どん」のメインテーマを歌った18年は飛躍の年となった。パーソナリティーを務めるラジオの公開収録中に出会った音楽家との縁がつながった。奄美で西郷隆盛の妻となる愛加那の義姉役としても出演。「奄美を知りたいと言ってくれる人が増えたのが何よりうれしかった」と語る。

観客と歌って踊る里アンナ(中央奥)=1月、東京(後藤誠さん撮影)
観客と歌って踊る里アンナ(中央奥)=1月、東京(後藤誠さん撮影)
 18年以後は、世界的フラメンコダンサーら多様なジャンルのアーティストと国内外で舞台を開催。島唄の魅力や可能性を広げようと走り回った。ただ、今はコロナの影響で思うように動けない。

 「自分には唄しかない。どうすればいいか」。迷い続ける中、奄美を拠点に動画投稿サイト(ユーチューブ)で4月12日から島唄を配信。3日からはオンデマンドコンサートを開き、「朝花」「行きゅんにゃ加那」「六調」など歌う。セルフィー(自分撮り)を駆使しすべて一人で制作した。

 「歌の合間に鳥の鳴き声が聞こえる時もある。奄美を訪れた気持ちになってくれたら」。島唄を志す子どもたちの憧れともなっている唄者は今日も高く澄んだ声を響かせる。
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 さと・あんな 1979年8月生まれ、奄美市笠利出身。これまでに発表したCDはシングル1枚、アルバム8枚。新譜「Message Ⅱ」は6月7日にリリースされる。