皆が元気になれる笑いを 「うけなかったら落ち込む。10回はうけないと立ち直れない」

落語家 瀧川鯉八
(2020/06/25 04:30)
 褒められるとコンペイトーを配る「まーちゃん」。もう褒めなくてもいいと言いつつ「じゃあ最後にあと七つ」とおねだり-。代表作「俺ほめ」の一コマだ。独特の空気をまとった新作落語は、見る者をじわじわと笑いの渦へと誘う。

 「これからも大変なことは続くかもしれませんが、気持ちに余裕ができたら落語でも見て笑ってほしい。自分も鹿児島で公演をするときには、みんなが元気になれるような笑いを届けたいですね」。新型コロナウイルスの影響で出番が大幅に減りながらも、ファンや古里鹿児島の人たちを気遣った。

 鹿屋市出身で5月に真打ちに昇進したばかり。「一度はまると癖になる」新作落語を武器とし、東京を拠点に活動する。真打ち昇進披露興行は秋に延期された。寄席は4月初めから休業となり、現在も新宿末廣亭と浅草演芸ホールなど一部の再開にとどまる。

 「今年は寄席でトリを務める機会が多くなる予定だったのに」と惜しみつつ「大変なのは皆同じ。乗り切るしかない」と腹をくくる。真打ちとしての初舞台は5月10日にネット配信で行った。「落語は聞いてくれるお客さんがいて成り立つもの。生の反応が恋しい」と残念がる。

渋谷らくごの配信で高座に座る瀧川鯉八=12日、ユーチューブスクリーンショット
 鹿屋高校を経て進学した東京の大学で落語研究会に入った。卒業後、進路に悩んでいるとき、CDやラジオから流れる落語を聞いた。「誰を傷つけるでもないあたたかさと面白さに気づいた。全ての笑いの基礎になっている」と感じた。2006年、瀧川鯉昇師匠に入門。10年には二ツ目に昇進した。

 新作落語は、2〜3カ月に一つのペースで作る。始めたきっかけは「だんだん、皆と同じことをやりたくないと思ったから」という。笑いのパターンが同じにならないように毎回手法を変えた落語作りに挑戦。職人かたぎで「新作がうけなかったら落ち込む。10回はうけないと立ち直れない」と笑いをひたむきに追究する。「歴史上にも、世界中にも、この話は自分しかできないという喜びがある」と魅力を語る。

 13年、修行仲間10人とともに若手グループ「成金」を立ち上げ、東京を中心に若者の落語人気に火をつけた。40代を目前に向き合い方も変わってきた。「以前は『うけたからうれしい』で自己完結していた。今はお客さんが喜んでくれることが自分の喜びにつながっている」。故郷を取り入れたネタ作りについては「鹿児島の人は鹿児島弁で話すと喜んでくれる。いつか挑戦したい」と意気込む。

 「自分は天才ですから」。電話インタビューで聞いたフレーズに思わず笑ってしまった。新たな笑いを生み出そうと格闘する姿は表には見せない。やっぱり“天才”は違う。
☆☆☆
たきかわ・こいはち 1981年3月生まれ。鹿屋市出身。これまでNHK新人落語大賞ファイナリスト、第1回渋谷らくご大賞などを受賞。