華麗なダンス支える鍛錬 「帰郷すると『成長したね』と声を掛けられる。うれしい」

東京バレエ団ソリスト 樋口祐輝
 2020/12/10 04:30
 幻想的な舞台に立ち、スポットライトを浴びながら軽やかに踊る。作家三島由紀夫を題材にした東京バレエ団オリジナル作品でもあるモーリス・ベジャール作「M」。没後50周年を記念し10年ぶりに配役を一新、三島の美学を具現する「聖セバスチャン」役に抜擢された。主要キャストの一人で「この役にという驚きもあったがうれしかった。内容が難しくて大変だった」。10月、11月末に東京と神奈川で上演され好評を博した。

 鹿児島市出身の27歳。大阪芸術大学舞台芸術学科でバレエを専攻し、2015年に名門の東京バレエ団に入団、今年ソリストに昇進した。「くるみ割り人形」のピエロ役やストラビンスキー作「春の祭典」の生贄(いけにえ)役など、さまざまな演目で活躍の場を広げている。

 新型コロナ禍で東京バレエ団の公演は中止や延期が相次いだ。「オンラインクラスを受講したり、スタジオを貸してくれるところに行っていた」ともどかしい日々を振り返る。外出自粛明けには「団内で筋トレが流行し、ロビーで鍛えるメンバーもいた」という。「年明けには延期されていた公演も始まる。筋トレもそうだが、レッスンやリハーサルで鍛えている」。華麗なダンスや跳躍は日々の努力によって支えられている。

 母親が指導するヒグチバレエスタジオ(鹿児島市宇宿)で12歳のときにバレエを始めた。「姉と兄はいつの間にかそれぞれの道に進んでいた。自分が跡取りとして続けることになった」という。幼い頃は、男性バレエダンサーが浸透していなかったこともあり「実はバレエが嫌いだった」と打ち明ける。転機が訪れたのは高校生のとき。スタジオの発表会に東京から男性ダンサーが訪れた。「ダンサーってかっこいいと思った」と振り返る。「高校最後になってようやくやる気が出た」と、バレエの道に進むことを決心した。

 大阪芸術大学には同期の男子学生が3人もいた。「競い合える相手がいたことで、それまでできていなかった基礎も頑張れた」という。バレエへの本格的な取り組みは比較的遅いというが「その分成長を実感できる。上半身の使い方など役のキャラクターによって立ち居振る舞いを変え、それぞれの雰囲気を出せるようになれたらいい。バレエの苦しくも楽しいところ」と話す。

後輩たちと躍る東京バレエ団の樋口祐輝さん(中央)=11月23日、鹿児島市の川商ホール
後輩たちと躍る東京バレエ団の樋口祐輝さん(中央)=11月23日、鹿児島市の川商ホール
 鹿児島市で11月末にあったヒグチバレエの発表会には「眠れる森の美女」の王子役として参加。「帰郷すると、幼い頃から知る人たちから『成長したね』と声を掛けられる。それがとてもうれしい」と顔をほころばせる。「東京から配信するのもいいが、古里鹿児島はもちろんいろんな所に行って踊りたい」とコロナ後を見据え目を輝かせた。

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 ひぐち・ゆうき 1992年、鹿児島市生まれ。両親が営むスタジオで12歳からバレエを始める。大阪芸術大学を卒業し2015年、東京バレエ団に入団。ダンスマガジン19年11月号では「美しい男たち」特集に選ばれた。