( 9/21 付 )

 「天の声にもたまには変な声がある」とは故福田赳夫元首相の言葉である。再選は堅いとみられた1978年の自民党総裁選の予備選で敗れた際の弁だ。

 自民党は「開かれた政党」を目指し、この年初めて全国の党員・党友が投票する予備選を実施した。ふたを開けてみれば福田氏は2位に終わり、国会議員による本選を辞退する。下馬評を覆して首相の座に就いたのが故大平正芳氏である。

 大平氏は「楕円(だえん)の哲学」を持論としていた。「行政には楕円形のように二つの中心がある」とし、異なる意見が適度な緊張の中で併存することが大切という考えだ。健全な批判勢力の必要性を説いたのだろう。

 安倍晋三首相に石破茂元幹事長が挑んだ総裁選はきのう、安倍氏が大差をつけて連続3選を果たした。議員票の8割を獲得し、「安倍1強」を改めて印象づけた。

 事実上、安倍氏の首相続投を決める選挙だったが、多くの国民に意思を示す手段はない。しかし、森友・加計問題など政権への不信感が解消されたわけでないことは、党員らの地方票で石破氏が善戦した結果が物語っている。首相が宿願とする憲法改正にしても「白紙委任」ではなかろう。

 バランスと合意を重視した大平氏の理念は首相就任から40年の今も傾聴に値する。「国民政党」を自任する自民党である。安倍首相には「謙虚に丁寧に」との自らの言葉に従ってほしい。