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 「日本は子どもたちの天国だ」。明治の初めに来日し、東京の大森貝塚を発見した米国人の動物学者エドワード・S・モースは、当時の庶民の暮らしなどを書き留めた「日本その日その日」にそう記す。

 赤ん坊が泣き叫ぶ声をほとんど聞いたことがなく、母親がかんしゃくを起こしているのを一度も見たことがないとつづる。日本人の子育てに感心したのか、「日本ほど赤ん坊のために尽くす国はない」とたたえる。

 それから150年の月日が流れ、耳をふさぎたくなるような虐待のニュースが後を絶たない。小さな命が奪われることもある“天国”の変わりようをモースが知ったなら、どれほど落胆することだろう。

 政府は、親権者のしつけであっても体罰を禁止する児童虐待防止法と児童福祉法の改正案を衆院に提出した。しつけのためなら多少の暴力は許されるという考えがはびこる現状を思えば仕方あるまい。

 先日の本紙「オセモコ」面に、体罰をなくそうと取り組むカンボジアの小学校が紹介されていた。問題を起こす子どもに、先生が警告カードを見せるようにしたそうだ。約束事を決めて、考えを改めていくのも一つの方法に違いない。

 モースは、体罰を受けることもなく育った子どもたちが増長せず、親を敬愛していることにも驚きを隠さない。「愛のむち」という言葉が無くならなければ、そんな親子関係は望めない。