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 今年100周年の映画雑誌のキネマ旬報は、いち早くベストテン方式の映画賞を設けたことで知られる。個人賞が加わった1955(昭和30)年、邦画で賞を独占したのは成瀬巳喜男監督の「浮雲」だ。

 林芙美子原作、鹿児島市でのロケ、終盤の舞台が屋久島と、郷土との関わりが深い。屋久島が降雨量の多い島として知られるようになった「月のうち35日は雨」という言葉が、せりふとして出てくる。

 戦中ベトナムで出会い、終戦後帰国してからも関係を続ける自堕落な男女を高峰秀子さんと森雅之さんが演じ、そろって初代の主演賞に輝いた。森さんは薩摩川内市ゆかりの作家、有島武郎の長男である。

 戦後間もないころ、黒沢明監督「羅生門」や溝口健二監督「雨月物語」などの名作に出演、動の三船敏郎、静の森雅之と評され、映画黄金期を代表する俳優だった。知的で陰を感じさせる役が似合ったのは、幼くして母親と父・武郎を失った影響だろうか。

 キネマ旬報などの日本映画歴代ランキングの男優部門では、石原裕次郎さんや高倉健さんらと上位の常連だ。しかし50年代に活躍し、鹿児島と縁のある森さんを記憶している映画ファンはめっきり減った。

 今はレンタルDVDやインターネットで古い名画を手軽に見られる。台風の接近で連休を家で過ごす方も多かろう。昭和の名優の演技に一度触れてみてはいかがだろうか。