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 少年は「気をつけ」の姿勢で口を固く結び、前を見据えている。背負われた幼子は目を閉じ、力なく頭を垂れている。1945年、原爆投下後の長崎で撮影された「焼き場に立つ少年」の写真である。

 息絶えた弟の火葬の順番を待っているのだという。子どもにも容赦ない戦争の非情さがそこにある。記憶の一場面と重なる戦争経験者もいるかもしれない。撮られた状況を思えば見るのはつらいが、目をそらせてはならない1枚である。

 この写真を世界中に広めようとしているのが、あす来日するローマ法王フランシスコだ。写真を印刷したカードに「戦争がもたらすもの」との言葉を添えて教会関係者に配った。

 法王は13億人超の信者がいるカトリック教会のトップに立つ。宗教を超えて国際政治にも影響力がある。歴代ローマ法王はそれぞれの言葉で核兵器廃絶を訴えてきた。38年前に来日した故ヨハネ・パウロ2世は広島市で「戦争は人間のしわざです」との声明を発表し、被爆者らの平和への行動を後押しした。

 それに引き換え日本は唯一の被爆国でありながら、核廃絶に向けて国際社会の先頭に立っているとは言えない。米国の「核の傘」に依存し、国連の核兵器禁止条約さえ批准していないのが現状だ。

 今回、法王は長崎市と広島市も訪れる予定だ。日本にとっては耳の痛い言葉があるかもしれない。真摯(しんし)に耳を澄ませたい。