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 「これだけ多くの新型コロナウイルス感染者が出ているのに、不思議と周りに感染した人がいない」。東京で働く娘が先日、電話でそんなことを話していた。1400万人が住む都会ならあり得る話だろう。

 一方、人口5000人の与論町では、わずか数日間で感染者が30人を超え、緊張感が一気に高まった。スマホには感染者の情報が飛び交い、「知り合いの名前を見つけると自分も接触がなかったか気になって仕方ない」という不安の声が聞かれる。

 島で唯一の総合病院で院内感染やクラスター(感染者集団)の発生が疑われている。顔見知りが多く、日頃の付き合いも深いだけに、切迫感は都会とは全く違うはずだ。

 感染者は、奄美大島や県本土の医療機関などに搬送されている。県内には26の有人離島があり、感染が起きると、病床など医療体制に余裕があるかないかを議論する余地さえ許さない。

 ここ数日、地方の感染が急拡大している。「圧倒的に『東京問題』と言っても過言ではないほど東京中心の問題」。つい2週間前に官房長官は語ったが、離島の厳しさに考えは及ばなかったのか。

 「どんな逆境でも、誠実さを忘れずに前を向くのがユンヌンチュ(与論出身者)」。台風被害をきっかけに与論から集団移住した人らの子孫が多く暮らす福岡県大牟田市で教えてもらった。その気質があれば、コロナ禍をきっと乗り切れる。