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 ドードーという飛べない鳥が、インド洋に浮かぶモーリシャス島にかつて生息していた。体長は1メートル、翼は極端に小さい。脚が短くずんぐりした体形はユーモラスで、動物園にいれば人気者になったろう。

 だが、人間が絶滅に追いやってしまった。大航海時代の16世紀末、船乗りに発見されて食用に乱獲されたのだ。それまで天敵がいなかったから動きがのろく、簡単に捕まる。人間が持ち込んだ犬や豚が卵を食い荒らしたのも一因とされる。

 人間の振る舞いは、種の命運を左右し得る。忘れてはならない苦い教訓といえよう。このモーリシャスが、今また危機に直面している。島の沖に先月、日本の貨物船が座礁し、流出した重油が海を黒褐色に染めた。

 美しい砂浜とサンゴ礁に恵まれ、ラムサール条約に指定された国際的に重要な湿地もある。マングローブの根の隙間に入り込んだ重油をひたすら手作業で取り除く地元住民たちの映像に、事の重大さを思い知る。

 歴史的に関係の深いフランスやインドは油回収の専門家を送り込んだり、大量の除去器具を届けたりと積極的な支援に乗り出した。日本も国際緊急援助隊が現地で活動を始めたが、出遅れ感は否めない。

 島の自然環境にとって、座礁した貨物船はドードーを絶滅させた人間と同様、残酷な侵略者である。可能な限り元の状態に戻すため日本も率先して役割を果たすときだ。