( 8/23 付 )

 直木賞作家の三浦しをんさんは自著で、博物館を「胸躍るテーマパーク」と例える。膨大な収蔵品の中から、何をどう見せるかは学芸員の腕次第で「その熱意と個性が魅力」と記す。

 福岡市博物館の「やまいとくらし」展も、江戸から大正時代に流行した伝染病をテーマに興味深い資料が並ぶ。普段は目にしない絵画や日記などは、市民がどう恐れ、どう乗り切ったかを伝えている。

 「黄旗を立ててコレラ搬送。赤痢は赤旗」「子どもは近寄っちゃいかん」。明治時代のコレラ患者搬送の場面を切り取った日本画は、先導する警察官らの表情も不安と恐怖に満ちている。

 230年前の博多祇園山笠祭りは、天然痘流行の渦中だった。人形師の報告書には通常の飾り山(みこし)とは別に、収束を願う「疱瘡(ほうそう)山」を5町が奉納したと残る。さらに50年後の商人は日記に「藩の命令で庶民に予防接種」と書いている。天然痘に長く苦悩したことが分かる。

 「コロナ禍の今、博物館として何を伝えるか」。学芸員らはアイデアを持ち寄り、何度も話し合ったという。それぞれが専門の資料をひもとき「厄災を乗り越えた先人の歴史」を集めた。

 人類は多くの犠牲を払いながらも、さまざまな病との闘いをくぐり抜けてきた。「コロナ禍も必ず克服できる。ともに前を向こう」。一つ一つの資料には学芸員らのそんなメッセージが込められている。