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 斎場の遺族控室で、よく折り紙を見かける。ひつぎに納める鶴や花を折る。こうした場に不慣れな子供たちはしばし夢中になる。大人たちも故人との思い出を静かに語らうひとときである。

 生花にも劣らない鮮やかな色や美しい模様は、最期の別れに感謝の気持ちを添えているように映る。小さな紙細工だが、一折り一折りに祈りを込める日本ならではの文化である。

 福岡市役所では毎年この時期、ロビーの一角を千羽鶴の束が彩る。透明な箱も置かれ、色とりどりの折り鶴で埋まっている。翼に文字が添えられたものが多い。「飲酒運転が無くなりますように」。

 14年前、同市の海の中道大橋で起きた飲酒運転事故がきっかけだ。例年8月末に開く根絶大会に合わせ、市民から寄せられる。今年の大会はコロナ禍で初の中止となったが、15万羽近くの折り鶴が届いた。

 3児が命を落とした悲しい事故は記憶に新しい。道交法改正による厳罰化へとつながり、最近は減少傾向が続く。とはいえ、飲酒運転による事故は昨年、福岡で133件、鹿児島でも56件が発生した。いまだゼロには程遠い状況が歯がゆい。

 折り鶴の贈呈セレモニーが先日あり、海の中道事故から5年後、息子が飲酒運転の犠牲になった女性に手渡された。「根絶を言い続けていかなければ」。そんな願いがこもった15万羽の折り鶴を、多くの人の元へ羽ばたかせたい。