( 9/11 付 )

 都内の電車では深夜、うとうとしている乗客をよく見かける。揺り籠のような振動が心地いいのだろう。お酒が入っていれば、なおのこと眠りに落ちやすい。

 これが最終電車で、自宅から遠く離れた終点で駅員に起こされたら…。始発までファミリーレストランで粘るか、大枚はたいてタクシーに乗るか。途方に暮れた人もいるはずだ。でもこんな苦い思い出は減るかもしれない。

 現在、新宿駅を出る山手線の終電は午前1時。JR東日本は来春のダイヤ改正で、東京駅から半径100キロ圏の在来線の終電を30分程度早めると発表した。一斉に繰り上げるのは33年前のJR発足後初めてという。

 きっかけは新型コロナだ。テレワークの普及や飲食店の営業短縮で深夜の乗客が減り、山手線の一部区間は以前の3分の1になった。「収束後も行動様式は元に戻らない」との判断に一抹の寂しさを覚える。

 しかし、もう一つの理由が保守・改良工事の時間確保と聞けば、納得がいく。作業員の人手不足が深刻になる半面、ホームドアの設置などで工事量は増えている。終電から始発までの時間が長くなれば、工事は効率化され、働き方改革にもつながるそうだ。

 30分とはいえ、影響は私鉄や飲食店にとどまらない。さまざまな業種が終業時間を見直し、オフィスビルの明かりも早めに消えるだろう。「午前さま」もきっと減る。いや、たぶん。