( 9/17 付 )

 草木染では、原料の見た目と染め出る色が必ずしも一致しないらしい。桜の花びらは灰色がかった薄緑になる。ほんのりした桜色が欲しければ春先に切った幹を煮出すそうだ。

 人間国宝の染織家、志村ふくみさんの著書「一色一生」に「色はただの色ではなく、木の精」とある。木々はそれぞれの色の精髄、つまり大本を宿し、育んでいる。開花の時季が来たら一気にそれが発露するイメージだろうか。

 色が内面からにじみ出るものならば、きのう発足した新内閣は今後どんな発色を見せるのか。菅義偉さんが首相に指名され、閣僚の顔ぶれが明らかになった。

 再任が目立ち、新鮮味は乏しい。総裁選の論功行賞や派閥のバランスへの配慮が見え隠れする。とはいえ、菅首相が訴える「国民のために働く内閣」を実現するための人選なら、独特のカラーが見えるのも遠くはあるまい。

 気になるのは、今のところ菅さんの政治家としての精髄が伝わってこないことだ。つい先日まで官房長官として私見は封じ、安倍政権のスポークスマン役に徹していた。この印象が強すぎるのか、目指す国家像を熱意を込めて語るような姿が思い浮かばない。

 新たなカラーを打ち出すために、いい方法がある。森友、加計学園や桜を見る会に絡む疑惑を洗いざらい明らかにすることだ。前政権の負の遺産を清算してこそ新政権が清新な色に輝く下地になる。