( 9/24 付 )

 えび色に染まり始めたえびの市のえびの高原を訪れた。一面のススキが色づいた光景は地名の由来ともいわれる。気温が下がるにつれて、赤紫色は濃くなっていく。

 えび色は漢字で「葡萄色」と書き、熟したヤマブドウの実の色を指す。枕草子には「めでたきもの」として「葡萄染の織物」とある。清少納言の目にもとりわけ魅力的に映った、日本の伝統色の一つである。

 気象予報士の武田康男さんは、著書「雲の名前、空のふしぎ」で秋を「色の季節」と呼ぶ。いてついた空気を押しやるように日差しが強まる春が「光の季節」なら、草木が鮮やかに装いを整える秋の主役は、なるほど「色」がふさわしい。

 新型コロナの感染対策と経済活動との両立に社会が動きだしている。観光関係者が秋の行楽にかける期待は並々ならぬものがあるようだ。だが、まずは日々の感染状況をにらみつつ慎重に行き先を選びたい。

 密閉、密集、密接の回避を重視すれば、空気の澄んだ高原や森林は手堅い選択だろう。鹿児島県や宮崎県は登山やハイキングの場所に事欠かない。足元の魅力に目を凝らせば、思わぬ穴場が見つかるかもしれない。

 えびのからの帰途、空が夕日に染まり始めた。空気中の粒子一つ一つが輝いているような黄金色にしばし見入った。さらに秋が深まれば柿の実が色づき、山は紅葉が彩る。色の季節は、これから本番を迎える。