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 本人も「望外」と驚いたのではなかろうか。福岡市で先月行われた将棋の王位戦で、藤井聡太二冠が使った直筆の「封じ手」が、インターネットオークションで1500万円で落札された。

 封じ手は2日制の勝負で初日の最後の指し手のこと。紙に書いて封をし、翌日はそこから再開する。史上最年少で二冠を獲得した歴史的対局だったことに加え、記された手は同じプロもうなる妙手とあって、破格の値段にも納得がいく。

 売り上げは九州豪雨被災地への支援金となる。対戦した木村一基九段の発案である。コロナ禍に追い打ちをかけて襲った災禍に心を痛めたからだ。品は小さな紙にすぎないが、善意が積み上げた高値と言えよう。

 一方こちらは、あきれた悪意の塊である。ジャパンライフの詐欺事件は、原価30円ほどの磁石をレアメタルなどと偽って100倍以上の値で健康器具として売りつけ、また貸しすればもうかるとだます手口だ。

 延べ1万人近くが2000億円以上の被害を受けた恐れがある。老後の蓄えを失った高齢者も多い。福島県では原発事故の賠償金が狙われた。二束三文の品を高価に見せかける際にアピールしたのが、政界やメディアとの人脈である。

 国会で問題になった「桜を見る会」に元会長が招待された経緯はうやむやのままだ。このまま疑惑を封じることは許されまい。将棋なら禁じ手、即反則負けである。