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 熊本県出身で初の幕内優勝とそれに続く大関昇進-。大相撲正代の活躍は4年前の地震、今年7月の水害と災害続きの故郷の人々を勇気づけたに違いない。

 出身校・東京農業大の関係者も大喜びだ。千秋楽の夜、知り合いの農大OBが「祝杯を挙げている」と電話をかけてきた。農大出の大関昇進は初代豊山以来2人目で実に57年ぶり。学生相撲強豪校の面目躍如といったところか。

 奇縁を感じたのは、秋場所終盤にやはり農大OBの2代目豊山こと長浜広光さんの訃報が届いたことである。昭和のスター横綱、輪島とのライバル物語が印象深い。同学年で高校、大学時代を通じて覇を競い、ほぼ同時期に初土俵を踏んだ。

 対戦のたびに大層盛り上がり、それぞれの母校の応援団が2階席で応援合戦を繰り広げたというから驚く。小結止まりでライバルとは差が開いたが、幕内の対戦成績は8勝10敗と意地を見せた。

 初代豊山は学生横綱として初めてプロ入りした先駆者で、引退後は時津風親方となり日本相撲協会理事長も務めた。現役時代は2年足らずで大関まで駆け上がったが、大鵬、柏戸らの厚い壁に阻まれて横綱には届かなかった。

 「ネガティブ力士」と呼ばれる弱気を克服した正代は先輩たちを超えて頂点を極められるか。次の11月場所からは熊本県民や農大OBはもちろん、全国のファンの声援がさぞかし高まることだろう。