( 10/6 付 )

 NHK連続テレビ小説「エール」を毎朝楽しみにしている。昭和を代表する作曲家古関裕而さんの妻、金子(きんこ)さんをモデルにしたヒロインの音の前向きな生き方に元気づけられる。

 戦時中を描く最近の放送には重苦しい空気が漂う。音楽挺身(ていしん)隊の活動を巡り、上司から「非国民」となじられた音は「みんな同じ考えじゃなければいけないのか。そうじゃない人は要らないという世の中はいや」と肩を落とす。

 政府に政策提言する日本学術会議が推薦した新たな会員候補6人を菅義偉首相が任命しなかった問題にも音の悲憤が聞こえてきそうである。政府は拒否した理由をきちんと説明しようとしない。

 6人の中には、共謀罪の趣旨を盛り込んだ法案を「戦後最悪の治安立法」と国会で批判したり、安全保障関連法は違憲として廃案を主張したりした学者も含まれる。学問への不当な介入と臆測を呼んでも仕方があるまい。

 政権の意に沿わないことや耳の痛いことを言う官僚らを遠ざけようとする露骨な動きがこのところ目に付く。「次は誰が標的にされるか分からない」。鹿児島県内の研究者の間でも危機感が広がる。

 朝ドラでは、ライバルの作曲家が「おまえの曲は軟弱だ。世の中の空気に合わせろと言われた」と苦悩を打ち明ける場面もあった。同じ方向を向くことを強いられたあの時代の気配が見え始めてはいないか。胸がざわつく。