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 古いアルバムの白黒写真がカラーに変わるのは昭和40年代半ばである。たとえ色あせていても、モノクロに比べれば人々の表情に生気が満ちて見え、現実感も増す。

 そんなカラーの特長を生かそうと、戦前から戦後にかけて撮影された白黒写真をカラー化する取り組みを東京大教授らが進めている。人工知能(AI)の技術を活用して人肌や空の色を付ける。AIが苦手な服や乗り物の色は戦争体験者の話や資料を基に補正する。

 カラー化された写真を見て昔の記憶がよみがえった高齢者もいるという。「記憶の解凍」と名付けられたプロジェクトの成果は7月に写真集として出版され、原爆投下のほか、特攻隊員らの写真も収録する。

 知覧飛行場の緑の芝は傷み、隊員を見送る知覧高等女学校の生徒が持つ桜はピンクに色付けされている。南さつま市の万世飛行場で出撃を控えた隊員は茶色い子犬を抱き、肌の色が若さを引き立てている。

 写真の色は作られたものなので実際とは異なるだろう。しかし、モノクロなら遠い過去の出来事のように感じられる戦争が臨場感を帯びて非情な世界を訴えかけてくる。

 共著者である広島出身の東京大1年、庭田杏珠(あんじゅ)さんは「戦前には私たちと変わらない暮らしがあった。それが一発の原子爆弾によって奪われてしまったことを想像してもらいたい」と記す。平和な世を願う新しい伝承の形である。