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 九州新幹線開業前に博多-西鹿児島(当時)を走った在来線特急787系「つばめ」は、落ち着いたグレーの車体が印象的だった。グリーン車の個室やビュッフェ、つばめレディの丁寧な接客が人気を呼んだ。

 デザインしたのは、後にJR九州の豪華寝台列車「ななつ星」を手掛けた水戸岡鋭治さんである。約30年前、初めて設計初期から関わった車両で「一番思い入れがある」と言う。

 看板列車となった787系は、その後も「かもめ」や「にちりん」など別の名を付けて九州各地で活躍している。来週運行を始める新しい観光列車「36ぷらす3」も787系を改造した。廃車寸前だった1992年製造の車両に、水戸岡さんが再び命を吹き込んだ。

 外観は重厚な黒となり、輝く金のエンブレムと細かな文様が豪華だ。車内の壁や荷物棚に使われる天然木は木目が美しい。初めて導入した畳敷きグリーン席は、イ草のほのかな香りが心地良い。

 ビュッフェ車両の復活もファンにはうれしい。つばめ当時のドーム型天井を生かしつつ、床や壁にはコロナウイルスの付着しにくい銅板を取り入れた。新旧織り交ぜたモダンな雰囲気が乗客を迎える。

 水戸岡さんの胸にあったのは「使い捨て文化への警鐘」である。36ぷらす3はその象徴と言えよう。姿を一新し、名前を変えたかつての人気列車は16日、鹿児島中央駅から一番列車が出発する。