( 10/11 付 )

 「その土地にふさわしいものを趣味にしたいと始めたのが陶芸だった」。スポーツジャーナリストの島村俊治さんが、NHK鹿児島放送局に勤務した半世紀前のことを本紙「朝の文箱」で振り返っている。

 作陶を通じて仲間が増え、大きな薩摩焼のつぼは今も横浜市の自宅で傘立てに使っているそうだ。島村さんのように鹿児島の歴史や文化に触れ、奥深さに魅せられた転勤族は少なくないに違いない。

 そんな地元の魅力を知るきっかけになるだろうか。コロナ禍のため、修学旅行の行き先を県外から県内へ変更する学校が相次いでいる。公立小中学校560校のうち、151校が県内に切り替えた。

 例年、熊本県に行っていた鹿児島市の牟礼岡小は鹿屋市輝北の牛舎を訪れた。1500頭を育てる巨大施設に興奮し、生まれたばかりのかわいい子牛の姿にも心を動かされたようだ。農家の苦労や命の尊さを考える機会にもなったのではないか。

 修学旅行生は各地で歓迎されている。出水市では職員がツルのかぶり物姿で鹿児島市から来た児童に手を振り、南九州市では地元の子どもたちが知覧ねぷた祭のおはやしで出迎えた。

 県土は海あり山あり島ありの南北600キロに及ぶ。行ったことのない土地や知らない文化がまだまだたくさんあるだろう。コロナ禍を逆手に取った修学旅行が新しい発見につながれば、古里自慢のネタにもなる。