( 10/14 付 )

 3年前、NHKが「木綿のハンカチーフ」制作の裏側を特集で取り上げた。作詞の松本隆さんが“元祖Jポップ”と自負するこの曲には、二つのバージョンがあるという。

 元々はアルバムの1曲だった。これをシングルにする際、作曲した筒美京平さんが弦楽器、さらに女声コーラスを加える。素朴な曲が華やかに変身する過程に、希代のヒットメーカーのすごさが垣間見えた。

 「また逢う日まで」「サザエさん」など世代を超えて親しまれる歌を届け続けた音の職人が、80年の生涯を閉じた。1970、80年代を中心に3000曲を書き、歴代1位のシングル7560万枚を売り上げた。アイドル歌謡を含む幅広いリストに、好きな歌を何曲も発見した人が多いだろう。

 幼い頃からピアノを習い、大学でジャズに傾倒する。レコード会社のディレクター時代に売れる曲の勘所をつかみ、作曲家に転身後は「ブルー・ライト・ヨコハマ」をはじめ大ヒットを量産した。

 「好きでやってるんじゃない。職業的なプライド」と裏方に徹してヒットを追い求めた。一方で、洗練された曲には後続の世代の評価も高い。吉田拓郎さんは「かなわない」と口にしたとされる。

 訃報を伝えるニュースの記録映像では「古い曲でも田舎に行って誰かが口ずさんでいたら、それが一番の幸せ」と照れくさそうに語っていた。もう皆そうしていますよ、筒美さん。