( 10/16 付 )

 東日本大震災の際、千葉県市原市で「有毒な黒い雨が降る」というデマが拡散した。市内で起きた製油所火災のためらしいが、市役所に問い合わせが殺到し災害対応に支障が出る騒ぎとなった。

 えたいの知れない事態に陥ると、人は恐怖を抱き不確かな話を信じやすい。空港から病院に搬送された外国人観光客が逃げた、マスクの次は紙製品が不足するらしい-。新型コロナウイルス下でも、怪しい情報や偏見が各地にはびこった。

 専修大学の山田健太教授は「コロナ禍で市民の良識を支えているのは、正確で信頼に足る知識や情報だ」と強調する。その上で新聞の役割を改めて確認し、社会と向き合うよう求めている。背筋の伸びる思いがする。

 コロナ報道をテーマにした「地方紙フォーラム」をきょうの本紙で特集している。全国12社をオンラインで結び、各紙の記者が事例を発表した。未知の事態に戸惑いながら奮闘する様子が生々しい。

 知的障害者施設で起きた集団感染を収束までリポートした中国新聞、一極集中の東京との比較で地方の豊かさを捉え直した新潟日報。切り口は異なるが、腰を据えて事実に迫る姿勢は共通する。

 きのう始まった新聞週間の代表標語は「危機のとき 確かな情報 頼れる新聞」。正確な情報を伝える責任の重さを日々自覚していきたい。不安になったときに手にとってもらえる存在であるために。