( 10/17 付 )

 <山の頂上に彫刻をおきなさい。/みんなに望遠鏡で見てもらいなさい。>。前衛芸術家オノ・ヨーコさんの詩集「グレープフルーツ」に、こんな一節がある。想像や行動を促す言葉が続く。夫のジョン・レノンの名曲「イマジン」にヒントを与えたとされる。

 もしやここにも? と思いを巡らせてみる。標高700メートル、栗野岳中腹に野外彫刻が点在する湧水町の霧島アートの森である。今月、開館から20年を迎える。

 鹿児島県が基本構想以来10年をかけて整備した。約13ヘクタールの敷地に23の作品が配置されている。国内外の作家が現地で眺望や地形のくぼみ、植生を確かめ、それぞれの作品を構想した。

 英国の彫刻家アントニー・ゴームリーは、デフォルメした鉄製の人物像5体を立たせるのに、白い木肌のシラキが自生する奥まった林を選んだ。金属の劣化で老いるような像を囲む木々は年々成長し、景色を少しずつ変えている。

 ここ数年は海外客も数多く呼び込んでいた。20周年特別企画は韓国を代表する作家の個展を計画したが、新型コロナウイルスの拡大で来春に先延ばしとなった。コロナ後の世界を反映する最新の現代アートが見られるかもと、期待したい。

 先日、久しぶりに足を運んだ。クヌギにカシワ、モミ、ヤブニッケイ。樹名板を追いかけながら歩くのも楽しかった。山の彫刻を照らすように、やがて葉も色づき始める。