( 10/23 付 )

 あの熱狂からたった1年というのに遠い昔のことのように思える。ラグビーワールドカップ日本大会。悲願の8強入りを果たした日本代表の活躍に日本中が沸いた。ワンチーム、にわかファンといった流行語さえ懐かしい。

 1試合平均3万8000人が観戦し、南アフリカがイングランドを下した決勝は7万人が詰め掛けた。肩を寄せながら歓声を上げる様子は、新型コロナ禍の今なら密集・密接ととがめられるはずだ。

 政府は今月末から横浜スタジアムでプロ野球の観客を満員に近づける実証実験をする。高精度カメラなどを駆使し、出入り口やトイレの混み具合、人の流れを調べるという。東京五輪も念頭に社会活動を回復し経済を回す思惑らしい。

 ただ、ファンの受け止めはさまざまなようだ。スカスカが好きだったから戻すのは残念-。インターネット上のコメント欄にこんな声が寄せられていた。いつまでもスカスカでは球団も困るが、ぎゅうぎゅう詰めは観客の望みではあるまい。

 スポーツ観戦に限らず、混雑の激しいイベントは小さな子ども連れや高齢者らが足を運びづらかろう。運営側にとって客層を広げることも目指すべき方向ではないか。

 一足飛びの満員回帰には慎重でありたい。密を避けるため座席配置を見直したり、日によって入場者数を抑えたり、コロナをきっかけに混雑が苦手な人への思いやりが広がればいい。