( 10/31 付 )

 小津安二郎さんは小津組、黒沢明さんだと黒沢組。映画監督が作品を撮る度に固定したスタッフや俳優が結集し、建設会社のように「組」と名乗る。ラグビー日本代表の「ワンチーム」を連想する。

 薩摩川内市が舞台の「大綱引の恋」でメガホンを取り、今春急逝した佐々部清さんの佐々部組も結束が固かった。昨年のロケなどで地元代表として世話役を担った堂園喜明さんは、その様子をつぶさに見た。

 甑島ロケでは飲食を提供したいという申し出を監督が断ったことがあった。会場が狭くて佐々部組全員が入れなかったからだ。ロケ中は同じ宿に泊まり、そろって食事を取ることにこだわった。

 だからといって近寄りがたい雰囲気ではなかった。監督は「佐々部組の親分は自分ではない。上に何人もいる」と女性スタッフたちの名前を挙げて、冗談交じりに語っていたという。

 伝統の川内大綱引を描く映画だけに、地元は資金集めやロケ現場の確保などで万全の協力態勢を敷き、監督らを感激させた。没後、監督夫人から堂園さんに「川内の皆さまとの出会いと『大綱引の恋』は佐々部にとって宝物になりました」とのお礼状が届いた。

 佐々部組と薩摩川内の人々がワンチームになった映画の鹿児島先行公開が始まった。きょう川内文化ホールでも出演者の舞台あいさつがある。チケット完売と聞いたら、監督はさぞ喜ぶことだろう。