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 ロックバンド「くるり」のメンバーは京都出身だが、鹿児島おはら節をカバーしている。九州新幹線が題材の映画「奇跡」の音楽を担当したのがきっかけだ

 カバー曲にも登場する代表的な歌詞が「雨の降らぬのに 草牟田川濁る 伊敷原良の おはらハァ 化粧の水」。だがよく考えてみて。「草牟田川」という川はありませんよ-と近著「おてっちき 鹿児島おはら節」で投げかけたのは鹿児島市の林竜一郎さんだ

 「ね」を間に入れて、文節に分けたらどうか。草牟田のね、川がね、濁るね。不詳の作詞者はそう意図したのでは。だから「そむたがわにごる」ではなく「そむたかわにごる」と歌いたい、と提案する。国語専門の小学校教師を勤め上げた知識が生きる

 「化粧の水」の解説も興味深い。伊敷や原良の石切り場から出る粉が、川を白く濁らせる。その様子を、白粉(おしろい)が溶けた水のようだ、と見立てた表現というから粋だ

 そもそも、古くは江戸時代から昭和まで作られた歌詞が100を超えるのには驚く。郷土の風景や庶民の生活が垣間見える鹿児島おはら節の世界を、おてっちき(思う存分)楽しんでほしいと書かれた1冊だ

 あすは第69回おはら祭。新型コロナの影響を受けて踊り連は例年の1割だが、天文館におはら節が流れる風景は変わらない。ヨイヨイ、ヨイヤサー。軽快なおはやしを口ずさめば、心も躍る。