( 11/5 付 )

 ふわふわ飛んでいたかと思うと、はじかれたように急上昇して秋晴れの空に消えた。しばらくしてふと気付くと、構えたカメラのレンズの先に止まるくらい接近している。

 旅するチョウとして知られるアサギマダラを見に、鹿児島市のかごしま健康の森公園に出掛けた。好物のフジバカマがこの時季、園内で開花するのを知っているのだろう。毎年見計らったかのように現れて蜜を吸うという。

 薄い水色の美しい羽と、変幻自在の飛び方が特徴的だが、生態も独特だ。渡り鳥のように春は北上し、秋は南下する。琉球弧の島々から本州の各地まで、数千キロも移動するというから驚く。

 こうした習性が明らかになったのは、ここ30年ほどだ。鹿児島県内をはじめ、全国各地の昆虫愛好家たちが捕獲して羽にペンで日時や場所を記して放し、再捕獲した人が確認して記録する。この積み重ねで移動パターンが徐々に判明してきた。

 秋に本土を飛び立ち、冬に奄美や沖縄で姿を現す。台湾で見つかったこともある。世代交代しながら、長距離移動を繰り返しているらしい。なぜ好きな花の場所が分かるのか、どうして方位を知るのか、謎はまだ多い。

 公園で見たあのアサギマダラは、もう旅立ったのだろうか。それとも蜜を吸いながら海原を渡る体力を蓄えているのだろうか。何とも想像力をかき立てる、美しくもたくましい季節の使者である。