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 「復興はまだまだ道半ば。光もあれば影もあります」。福島県双葉町にできた東日本大震災・原子力災害伝承館を訪ねると、俳優西田敏行さんの声が迎えてくれる。

 東京電力福島第1原発の地元。円形のホールに7面の大型スクリーンがあり、事故で一変した“原発城下町”の明暗を映し出す。温かみのある福島弁を交えた語りに、震災で傷ついたふるさとへの切ない思いがにじむ。

 伝承館は、震災と原発事故の記憶を継承する県の拠点施設として国費53億円が投じられた。かつて町内に掲げられた「原子力明るい未来のエネルギー」という標語看板の写真パネル、除染で出る土砂や廃棄物を詰める袋の見本など、印象的な展示物が並ぶ。

 ただ、復興の歩みに重点を置く展示内容に「悲惨さや教訓が伝わりにくい」との指摘もある。県が収集した資料24万点のうち展示は約170点にとどまっており、運営団体は見直しを検討するという。

 双葉町は今も全町避難が続く。第1原発の北3キロの津波被災地に立つ伝承館からは除染廃棄物の中間貯蔵施設が見える。まだ先の長い復興や廃炉作業の切実さを思わずにはいられない。

 「未来のこと、皆さんと一緒に考えることができたら」。西田さんのナレーションはこう結ばれる。来年3月で震災から10年。自然災害への備えと併せ、原発事故の検証が欠かせない。教訓を風化させてはならない。