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 木枯らしが吹く季節の訪れとともに、福岡の商店街はにわかに活気づく。みずみずしい野菜や大袋に入った肉など鍋料理の具材が並び、呼び込みの声も威勢がいい。

 もつ鍋のイメージが強い福岡だが、水炊きも劣らず人気だ。博多流は鶏がらや手羽先を数時間煮込んだだしが特徴。うまみたっぷりのスープは舌触りもよく、キャベツやネギの味が引き立つ。親戚の集まりやちょっとしたもてなしに重宝されている。

 食通で知られた北大路魯山人は鍋料理を「クツクツと出来立てを食べるのが何よりの楽しみ」と記す(「魯山人の食卓」)。不足しがちな栄養素を取るのにもぴったりだ。野菜に含まれるビタミンCは、免疫を高め風邪予防に一役買うという。

 仲間で鍋を囲めば性格が見え隠れして面白い。作り方をあれこれ指図する“鍋奉行”がいれば、あくをまめに取る“悪代官”、出来上がりを待つだけの“町奉行”もいる。

 とはいえ、昨今のコロナ禍で宴会の大鍋はずいぶん減った。1人用の小鍋で提供する店が増え、座席も3密を避けて広めに間隔を空けている。少々味気なく感じるが、これも新しい生活様式と慣れるしかない。

 魯山人は「楽しみなべ」の名称を好んだ。多種多様な具材を「あれを食べよう、これを食べよう」と思い巡らすのも醍醐味(だいごみ)だろう。きょうは二十四節気の立冬。鍋に欠かせない白菜や春菊も旬を迎える。