( 11/10 付 )

 米国の夜空に歓声が響き渡った。黒いマスクを着けたバイデン前副大統領が小走りで壇上に駆け上がると、民主党支持者は拳を上げ、クラクションを鳴らして祝福した。

 大統領選の投票から5日目、ようやくバイデン氏の勝利が確実になり、感極まって涙する支持者の姿も見られた。国民がこれほどまで熱狂するのはなぜだろうか。日本ではこうしたうねりは想像しにくい。

 自由と民主主義を掲げる超大国には差別や対立が巣くう。バイデン氏は「分断ではなく、融和を目指す大統領になる」と誓った。すべての国民に向けられた言葉は、支持者らが切望する国の姿に違いない。

 ただ、大接戦になったのは、温暖化対策など国際的な課題に背を向けたトランプ大統領を評価する国民が少なくないことの表れである。バイデン氏が約束した「(共和党支持の)赤い州も(民主党支持の)青い州もない合衆国」実現への道のりは険しそうだ。

 「勝者は私だ」。バイデン氏の当選が確実になった後も、トランプ氏は敗北を認めていない。郵便投票などの開票作業に不正があったとして、裁判で争う姿勢を強めている。

 どんな激戦であっても、敗れた候補が相手候補に祝福のメッセージを送る「敗北宣言」は大統領選の伝統だという。敗者の言葉を歴史に刻み続けてきたのは誇るべき文化だろう。深まる溝を少しでも埋めるような言葉が待たれる。