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 世界のトイレ環境整備を目指すWTOという国際NPOがある。正式名は世界トイレ機関。設立したシンガポールの社会起業家ジャック・シムさんは「トイレは時代と社会の鏡」と訴え奔走している。

 認知度アップのため世界貿易機関と同じ略称で、訴訟を恐れながら付けたとは笑えるが、運動は大真面目だ。自著「トイレは世界を救う」によると、途上国の42億人が安全できれいな環境になく、感染症などで毎日1400人以上の子どもが亡くなっている。

 きのうは日本トイレ協会が定めた「トイレの日」、19日はシムさんが国連に働き掛けて創設した「世界トイレの日」。豊かな水に恵まれ、清潔さで評価の高い日本も、見回せば多くの課題があるのに気付く。

 女性用の数の少なさは文化・商業施設を中心に改善が進んだものの、足腰の弱い高齢者らが使いづらい和式はまだ残る。障害のある人には十分な広さがない。性的少数者への配慮も求められる。

 中でも急を要するのは災害時の備えだ。難を逃れても、水が止まれば自治体の仮設トイレ準備には数日から数十日かかるので、簡易トイレの備蓄が必要になる。感染症対策としても大事だろう。

 シムさんらの試算では、人は一生のうち平均3年間をトイレで過ごすという。途上国の問題はもちろん、生きる上で欠かせない場の充実を考え続けたい。水に流してはいけない話である。