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 福岡県久山町(ひさやままち)は福岡市の隣にある人口約9000人の小さな町だ。自然が豊かで四季の風情も楽しめるのどかなベッドタウンだが、医学界で知らない人はほぼいない。

 1961年から九州大学が続ける「久山町研究」がその理由だ。40歳以上の全住民を対象に、脳卒中や心臓病、認知症などのデータを蓄積している。性別や年齢別人口などが全国平均に近く“日本の縮図”として白羽の矢が立った。

 驚くのは、亡くなった後に生前の健康状態との関係を調べる病理解剖に多くの人が協力していることだ。住民の理解なくして研究は成り立たず、膨大かつ正確な記録は日本の医学発展に貢献してきた。

 最近注目を集める研究テーマの一つに糖尿病がある。食生活の欧米化に伴う肥満の増加や運動量の減少を背景に、現代の国民病ともいわれている生活習慣病だ。有病者や予備軍は全国で2000万人以上、鹿児島県でも20万人以上と推定される。

 日常に根ざした久山町研究ならではの分析がある。緑茶に含まれる成分に着目、研究を進めると、緑茶を多く飲む人ほど糖尿病リスクが低かった。1日に座っている時間が長い人ほど糖尿病になりやすいことも分かった。

 きょうは「世界糖尿病デー」。たまには仕事や家事の合間に緑茶を飲んだり、椅子から立ち上がって軽く体を動かしたりしてみてはどうだろう。60年間のデータを生かさない手はない。